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□*このすばらしき世界
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◇このすばらしき世界◇







目尻に溜まった滴を指ですくう。


綺麗でガラス玉のようなブルーアイズが濡れている様は、何とも扇情的で胸を高鳴らせた。



昔とは違う瞳。知らない表情。
自分が知っているお前は…俺の知っている幼いお前は、此処には居なかった。




******




短くも長い歳月で変化したお前の姿を見た時。俺はお前を抱き締めてやることしか出来なかった。
自分のいない間にお前に降りかかった数多もの苦難。その非情な迄の道のりが、無理矢理にお前を大人にしたんだろう。



以前は、こんな顔で涙することはなかった。
怒ることも、喚くことも、悲しみで顔を歪めることもなく流れる滴。


少しだけ口を開き、無表情の中で、それは只々異質なモノで。



瞳の縁を指でなぞり、頬を撫でる。

それでも溢れる滴を、今度は唇でなぞり。




彼の、静かな眼差しを見る度に。

物言わぬ凛とした背筋を抱き込む度に。

切なくなる感情。時々、一緒にいることの出来なかった自分への叱責と自責の念に苛まれるけれど。
お前がそんなこと望んでないのは分かってるから、そんな感情には気付かないフリをする。
否。むしろ、その感情が。思いが。お前への慈しみに変わっていくのだ。

心に潜む激しい愛情が変わることはなく。
むしろ、その感情は更に激しく身の内を焦がしていた。




目の前にある、昔より逞しくなった身体を抱き寄せる。すると、ゆっくりとだが確実に身を預けてくる身体。愛おしい、重み。頭を撫でると、小さく息を吐いたのが分かった。

「そんな綺麗なカオで、泣くなよ。」

「…ん。」

「俺、これ以上お前に溺れようがないって思ってたのに…ズルいよなぁ。」

「何が?」

「魔性のフェロモン。」

「ナニソレ。」

腕の中で震える肩。
クスクスと、クラウドが笑う度に耳に掛かる吐息がくすぐったい。

「俺、お前いないと駄目だホント。」

抱き込む力を更に強めれば、クラウドの腕が俺の背に回される。
その暖かさに、胸が疼く。

「好き過ぎて、愛し過ぎて、死にそう。」

「ばか。それ全部、俺の台詞だ。」

少しだけ距離をあけて、覗き込んだクラウドの顔。
ふんわりと、幸せそうに。昔と同じに綺麗に笑うその顔に、なんだか無性に嬉しくなった。

「ぁあー!!ほんっと、お前って!!」

勢い良く口付けて額を寄せて。
囁き合うように愛を紡ぎ。指を絡ませ。




























変わってしまった世界。



変わってしまったお前。








それでも、その笑顔だけは変わらないから。



(俺は世界を憎まなくて済みそうだ。)






END.



→生きていた子犬と孤独だった世界の英雄


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