■ダストボックス■
□学生2
1ページ/1ページ
今日の夜は特に空気が澄んでいた。
バイトの休憩中、店の外で一服しながらふと見上げた星空は、今にも眼前に降り注いできそうなほど強く瞬いていて。
(こんな街中でも、案外見えるもんなんだなぁ)
以前住んでいた場所では到底叶わないその綺麗な空に思わず見惚れた。
あの場所は…。背の高いビルが狭い空間に犇めき合い、空を見上げることすら困難で。僅かに見つけた綻びからも、都会特有の喧騒と無駄に多い街灯の明かりの所為で何処かくすんだ星明かりしか目に出来なかった。
つまらない街。この街に来るまでの16年間ずっと過ごしていた場所だったけど、今思い出しても何の感慨も浮かんでこなかった。
しばらくそのままの姿勢でジッとしていたが、数分経つと首の後ろが強ばってきたので、仕方なしに視線を下げる。
ふう、と一息。
既に短くなっていた煙草を灰皿に押し付けながら立ち上がる。二度三度首を鳴らしながら、感慨深げにもう一度空を仰ぎ見れば、一等輝く北の星に目が止まり、その強い輝きに俺は思わず目を細めた。
強く瞬くそれは、まるで…。
「よぉ、看板息子。」
「…冷やかしはカエレ。」
そのたった一言で現実に引き戻された。
さっきまでのいい気分が台無しだ。
上げていた顔を声のした方へと向ければ、良く見知った悪友の姿がそこにはあった。
パーカーにジーンズというラフな格好。オレはというと、学校帰りにそのまま直行したから制服姿のままで。
「相変わらずつれないね。」
「お前に愛想振りまいてどうすんだよ。」
軽口を叩く相手に溜息混じりにそう返せば、苦笑と共に肩をすくめられた。
「冷たいなぁ。」
それとも僕って嫌われてる?と、偽物臭い笑顔でもって問い掛けられる。
全くその通りだったので黙っていると、頭上から溜め息が漏れて。
「ここは否定するトコだろう。」
「否定するとこなかったし。で、今日は何?俺、まだ仕事あんだけど。」
もうすぐ休憩も終わる。腕時計を見て時間を確かめると、残り時間はあと僅かだった。
「あれ、シフト変わったの?」
「休んだ奴の替わり。」
「あ、そ。それは残念。」
この男は最近よく勤務交代の時間に現れては俺を遊びへと誘いに来ていた。
END
*長い間書き途中で持ってた話。
煙草は二十歳になってから、ね?
←モドル