■ダストボックス■

□ザックラ子+レノ
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「嫌いだ。」

ザックスなんか嫌い、と言って唇を噛みしめる。
今日のためにと用意したレースのワンピースも、気合いを入れて何時もより丁寧に施した化粧も髪の毛も、雨と涙でぐしゃぐしゃになってしまっていた。
服の裾をぎゅっと握って俯く。

「泣くなよ、と。」

そんな私の前で、コンビニの袋片手に傘を差している赤髪の男。
そっと傘を私の方に傾けて、頭を引き寄せられた。
彼は自分の服が濡れることも構わずに私の頭を抱えて、ゆっくりとあやす様に撫でてくれて。

「お前に泣かれると、オレはどうしたらいいか分からないんだぞ、と。」

ポン、ポン、とリズムよく触れては離れる手のひらの熱に、涙はとめどなく流れて。
止まらない滴は彼の肩口に吸い込まれていく。
いろんな感情でぐちゃぐちゃになって、行き場のない感情の波に心は張り裂けそうだった。

頭の中にはさっきまでの出来事がループしていて。
鳴り響く携帯。強ばる表情と走り去る背中。
すぐ戻るから待っててなんて、都合のいい台詞になんか頷けなかった。引き留めたくて傍にいて欲しくて、彼の腕を掴もうと伸ばした腕は、空を切って届かない。
その手が届いていたら何かが変わっていた?
傍にいてと、行かないでと伝えていたらこんな風にはなってなかったのかな。

(ザックスは、それでも行くよね。私を置いて。)

彼は優しくて、情の深い人だから。
そんな彼だから好きになったくせに、その優しさが今は辛い。

「耐えられなかったよ、レノ。」

他の誰かが辛いときには駆け付けていって、恋人の私の傍にはいてくれない。
苦しくて悲しくて、心が千切れてしまいそうなのに。彼はここにいない。彼はいないんだ。

「もう、ダメみたいだ。」

呟いた声に、撫でていた手の平の動きが止まり、強く頭を抱え込まれた。
頑張ろうとしたけどダメだった。彼のことを信じようとしたけど、それで不安がなくなる訳じゃない。疑心暗鬼になる心と、それでも彼を思う気持ちの狭間で身動きが取れなくなっていた。

「お前はよくやってたぞ。」

レノの言葉が鼓膜をふるわせる。

「アイツは、馬鹿だ。」

何も分かっちゃいない馬鹿野郎だと吐き捨てられる言葉。
思わず、彼の服を握って縋るように身を寄せた。





END.

*ごちゃごちゃ設定考えて結局表しきれなかった片鱗。
女クラ一度ぐらいやっとかんととか思った。そして失敗した。


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