■ダストボックス■
□happy birthday
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びっくりした。
本当にびっくりしたんだ。
だって、今日は休みだから飯作って待ってるからなって笑って見送られた朝は、よもやこんな展開になるなんて思ってもみなかった。
「おめでとう、クラウド。」
「ザックス…なんで。」
「驚いただろ?」
したり顔でニヤリと笑むザックス。俺は呆然として上手い言葉が出てこなかった。
だってザックスは知らないはずなんだ。俺は何も言ってなかったしザックスも何も聞かなかったから。なのに。
目の前には見たこともないような豪華な料理と高そうなワインが何本も並んでいた。その真ん中には小ぶりのケーキが置かれていて、そこには少し歪な字で"happy birthday CLOUD"と書かれていた。
「驚かしたくて、知ってるって黙ってた。」
ドッキリ大作戦成功!と言って俺の頭をくしゃくしゃってかき混ぜてくる。うわ、って思って思わず俯いた。ヤバい俺泣きそうだよ。
ずっと忙しくてそんなこと忘れてた。最近は毎日をやってくだけで必死で、他のことに気を向けるなんてできない状態だった。だから、自分のことなのに全然気付かなかった。誕生日だなんて。今の今まで分からなかった。
それだけ余裕がなかったんだ俺、なんて今更実感。そういえば、こうしてザックスの温かさを感じたのはいつが最後だったっけ?
こうやって頭をくしゃくしゃってされたのはどのぐらい振り?
俺はずっと自分のことばっかりで周りなんて見てる余裕がなくて。こうして面と向かってちゃんと話したのは、たぶん何日も前のことだ。それすらすぐに出てこない。あぁもう…俺、最低だ。
「ザックス、ごめん。」
堪らなくて苦しくて拳を握る。ザックスの気持ちが嬉しくて、それと同じぐらい自分が情けなくて胸が痛かった。
「何でごめん?」
優しく問いかける声。情けなくて何も出来ない俺に、ザックスはどこまでも優しい。
「だって、俺…。」
こんな風にしてもらえる資格ないとか、返せる物が何もないとか、つまらない言葉が頭の中に浮かんでは消えてを繰り返していく。ぐちゃぐちゃになる思考と、もどかしい気持ちで一杯になった俺は結局何も言えなくて黙り込んでしまった。それがザックスを困らせるだけだって分かってるのに、言葉が続かない。
END.
*追い詰められて毎日生活してる時って、人の優しさとか気付けないけど、一回気付くと泣けちゃうもんだよね、なクラウド。なんじゃそらぁ。