FFZ*NOVEL

□04.小さな願い
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きっと。

言えないことばかり。



そんなの分かっていた。ソルジャーのミッションは極秘なものばかりで、大抵のことは口に出来ないんだってこと。内容だって、一般兵の自分には考えも及ばないようなことばかりなんだってことも。

任務は絶対で、今は人手が足りないから余計。彼はあちこちに駆り出されていた。
本当に世界中至る所を文字通り飛び回っている。


既に、1ヶ月以上彼の姿はこの部屋にないし、きっとまだしばらくはこのままなのだろうとも思う。

淋しくないと言えば嘘になるがそんなこと、口には出してなんて言えやしない。自分から殊勝に連絡なんてものも取らない。逢いたい思いが募るだけだし、元来持ち合わせている素直でない性格故、今更そんな可愛げがある行動などもとれないでいる。…かれこれ2週間程。
もちろんそこに、若干の後悔なんてものを感じ得ない訳ではないのだが。

(もぅ少しだけ、素直になれたら…)

この淋しさも肌寒さも、きっと伝えることが出来るだろうに。
本当にもどかしくてならない。しかし先に進む勇気など持てないことも、悔しいながらに自覚していた。
臆病者な自分に、もう何度目になるかはわからない悪態を吐く。


(ザックス…どうしてるかな。)

今はどこにいるのかとか、何をしているのかとか。
怪我などしていないかとか、辛い思いをしていないかだとか。


自分が今寮の窓から見上げている大空を、…彼も見ているのだろうかとか。



どうしようもないことばかり、思っては過ぎてを繰り返す。



今の自分では、彼のために出来ることは本当に少なくて。

広がる空に向かって、ささやかな祈りを捧げることぐらいしか、出来なくて。

その行い自体も女々しく、情けなさすぎて、なんだか泣けてくるぐらい。



それでも。




願わずにはいられない。






どうか。


少しでも彼の心が安らぐように。

日々身も心もすり減らすばかりの戦場で。

せめて。

彼が寝ている間だけでも、優しく暖かな夢を見られますように……。


(祈ってる。…アンタの心が壊れないように。)




了。



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