本
□視線と不安
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「…買い物?」
「うん」
六からの誘い。
いつもならアタシから
誘って行くのに、珍しい。
「これ」
「弦切れてるね」
六が持ってきたのは
愛用のギター。
一番細い弦が切れていた。
あぁ、なるほど。
「行こう」
「うん」
あんたにとって
死活問題だからね。
買い物、行こうか。
六がよく利用する楽器店は
少し遠いからアタシの車で。
六は免許を持っていない。
それは別に嫌じゃない。
アタシが運転するから
助手席で六は暇を持て余し、
時々顔を伏せたりする。
別に見てる訳じゃないけど
気配で分かる。
その仕草が好き。
「着いたよ」