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□狐の親子
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季節は冬。


つい最近まで紅葉で彩りを見せていた尺魂界も、いつの間にか雪で真っ白。


瀞霊廷内も綺麗な雪景色に包まれていた。


「寒ぅ!」


今日もチラチラ白いものが降っていて、私は地面に足跡を作りながら自分の隊舎に向かって歩いていた。


「あら?」


ふと、目の前を通る焦げ茶色の物体。

その子はピタリと足を止め私をジッと見てくる。


「きゃ〜、可愛い!」


おいで、おいでと手招きをしてやると、その子は恐る恐る私に近付いて

口にくわえていた何かを落とした。



「――え…?」





これって…





【狐の親子】










ここは三番隊。


詰所で市丸と吉良は少しの休憩をとっていた。


「美味しいですね。」


「せやろ?ほら、もっと食べ。」


市丸が甘味屋で買ってきたというお菓子を食べながらお茶を啜る二人。



「あ、そういえば。女性死神協会からアンケートがきてましたよ。」


イヅルは持っていた湯飲みを置くと、ピンク色の封筒をボクに手渡した。


「何やの、これ?」


「さあ?何でも男性死神の隊長、副隊長に質問だと言ってましたが…。」


「誰が言うたん?」


「草鹿副隊長です。」


「あぁ…」


何を企んでいるんでるんだと思いながら、ピンク色の封筒からアンケート用紙を取り出す。



何なに?


“あなたは好きな女性にどんなプロポーズの言葉をおくりますか?”



「ぷっ!これ、イヅルは答えたん?」


「いえ、僕はまだ目を通していないので…」


くすくす笑いながら紙を渡してやると、内容に目を通したイヅルが頬を赤くした。


「な、何ですかこれ!」


「なぁなぁ?イヅルは好きな娘に何てプロポーズするん?」


「な…!」


初なイヅルは更に顔を赤くして『そんなの知りません』と照れながら湯飲みに口をつけた。



か…

可愛え!


これは是非、イヅルの口からプロポーズの言葉を聞いてみたい!


そう思ったら止められない市丸は、吉良の顔を覗き込んでニコリと笑みを向けた。


「ええやん。アンケートなんやし。」


「そっ、そうですけど…
い、市丸隊長はどうなんですか?」


あ。

誤魔化す気やな。



「イヅルが言うたら答えたる。」


「えぇ!?そ、そんな…」


おろおろと困った顔を向け、う〜ん…と悩み始めるイヅル。




あぁ…何て


何て楽しいんやろ。



悩むイヅルの横で、市丸は緩む口元を隠すように湯飲みに口をつけた。
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