戦国

□お伽噺
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くんくん・・・・・


おれは鼻をひくつかせ、かごめの優しいにおいを捕らえた。
それと同時に風を切って走り出す。



かごめ、かごめ、かごめ・・・!!



かごめは三日前に自分の国に帰ってちまってた。


『犬夜叉、ごめんね。ちょっと身体だるいから向こうに帰るね・・・・』



その時、かごめはどこか哀しそうな顔してたよな・・・。なんかおれ、悪いことでもしたか?



最近は桔梗とも会っていないし、かごめが嫌がるようなこともしていない。


でも暫く、かごめの笑顔を見ていない気がする。



かごめ、笑ってくれ・・・おれは、おまえの笑顔が好きなんだ!!



ここまで考えるといつの間にか骨食いの井戸の一歩手前に着いていた。


しかし、いつもはかごめに会いたい、と思い弾む心も何となく重りが引っかかっているように沈んでいる。
それと相成って足取りも重くなる。



なんだ・・・?妖怪がいるのか?



だが辺りには邪気や妖気は感じられない。



どうしちまったんだ?おれは・・・・・




はやくかごめに会いたいのに思うように足が動かない。



くそっ・・・・



舌打ちをしながらもがくように歩を進ませ、必死に進む。



ザアッ!!!



一筋の風が己の銀髪を巻き上げ、一時かごめのにおいが強くなる。

ふと顔を上げると、そこには会いたくてたまらなかった少女の姿。



「かごめ・・・」



「犬夜叉・・・」



いつかと同じようにかごめは井戸の淵に腰掛けていた。

――――あれは・・・・そうだ。桔梗を守ると決め、かごめに別れを告げようとした時だ――――

それでもかごめはそばに居ると言ってくれた。


かごめ・・・三日前と同じような哀しい顔してんな・・・。向こうでなんかあったのか?
とにかくはやくかごめを元気付けねえと!!



「かごめ。さっき楓ばばあが餅焼いてかごめを待ってたぞ。はやく帰ろうぜ!!」



おれは動こうとしないかごめの手を掴んで楓ばばあの村へ向かおうとした。



「どうした?かごめ。」



いつもは餅がある、と言えば楽しみだね、とか言って先に走って行くぐらいのかごめはその場にとどまっていた。



「かごめ?まだ治ってねーのか?」




それなら楓ばばあの村で休め、と言おうとした時、



「私、考えてたの・・・」



「え?何を?」



「私のこと、犬夜叉のこと、桔梗のこと、そしてこっちのこと・・・・・」



どっかで聞いた言葉だな。これもあの時か。なんで今さらそんなことを?



「それは前に聞いた。それでもかごめはおれのそばに居るって言ってくれたじゃねーか。居て、くれるんだろ?」



おれはかごめの表情が暗いからなるべく声を穏やかにして言った。考えもしないで言った言葉は偶然にもあの時と同じ。



あのあとかごめは笑って手、握ってくれたよな・・・・



しかしまた笑ってくれると思っていたかごめはふるふると首を左右に振って否定の意を表している。



「な・・・何でだよ!?一緒に居てくれるって・・・・」



「確かに言ったわ。でもね、考えれば考えるほど私は犬夜叉のそばに居ちゃいけないって思うの」



「居ちゃいけないってなんだよ!!そんな理由どこにもねーだろ!?」



「犬夜叉、聞いて。私は確かにあんたのそばにいるって言ったわ。」


でもね、とかごめは続けた。



「犬夜叉が桔梗を救えないのは何でだと思う?それはね、犬夜叉が優しいから。妖怪の血が混じっているだなんて思えないくらい・・・。だからあんたは自分を好いてる私を捨てられない。桔梗の方が好きなのにね。」



「違うっ!!かごめ、おれは桔梗の方が好きなんて・・・ッ!!」



言ってねえ。桔梗は救わなきゃならねえ、けど!!だからってかごめが二番目なんて一度も思ったことはねえ!!!



かごめはおれの言葉なんて聞かずに続けている。



「それにね、私は異邦人。時を越えて来たの。いつかは帰らなくちゃいけない。本当はこっちで生きていてはいけない。私がこっちにいることで歴史が狂ってしまうの。まだ何も起きてないけど、いずれは大変なことになる。」


「わかるでしょ、犬夜叉?だから・・・・"さよなら"しよ?」



かごめは目の前で寂しそうな、でも笑顔を浮かべている。



サヨナラ・・・?"さよなら"ってなんだ?それは人が別れる時に言う言葉、だろ?
おれたちは別れなきゃいけない時じゃないだろ?

ワカルデショ・・・?何が"わかる"ってんだよ。おれは・・・・





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