チェックメイト

□第九章
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試験も残り二つ。
次の試験はゼビル島という無人島らしくて、やっとこさの受験者同士での戦いというわけだ。腕がなりますね。
クジを引く順は三次試験の合格者順。ヒソカさんの次だからわたしは二番目になる。そっと引いて番号を確かめるが、その番号の相手に覚えはなかった。
試験官がいうには、自分のプレートは三点。相手のプレートも三点。そしてそれ以外は一点らしく、最終的には六点になれさえすればいいらしい。
一週間の滞在時間を終えて、集合場所に集まりさえすれば合格になるという、なんとも簡単なルールである。
先に引き終えたヒソカさんは船の柱にもたれ掛かるようにして立っていた。ゼビル島到着までは暇のはずだ。彼に近寄ると片目を閉じてこちらに目配せされた。

「どうでした? わたしの番号でしたか?」
「いいや。キミじゃないよ」
「そうですか。ねね、ヒソカさん、一番さんって誰だか知ってます?」
「さあ? 一番を引いたの?」
「そうなんですよお、どうしましょうか。みあたらないんですよね……」

吐息をこぼす。残り五十人にも満たない人数でも、番号探しをするのは面倒だ。だいたい胸の番号札を取ってしまう人間が殆どで、もうどこを見ても探すことは難しい。

「そういえば、ヒソカさんは取らないんですか、番号札」
「そういうキミこそね」
「いや、面倒で。とった方がいいんですかね」
「さあ、どっちでもいいんじゃない?」

どっちにしろ今更だけどねとヒソカさんは笑った。確かに今まで胸にぶら下げていたのだ。確認されただろう。隠したところでもう確認が終わっていたら狙われる。隠す必要はどこにもなかった。苦笑しながらヒソカさんの隣に立つ。

「イルミさんって」
「ギタラクル」
「へ?」
「試験中はそう呼べって」
「……はあ。ギタラクルさんって、あの姿が普通なんですかね」

そうだとしたら日常生活大変だっただろうな。他人事ながら慮ってしまう。

「どうして?」
「どうしてって、どうしてでしょう? なんか漠然と違うかもしれないなって思ってしまって」
「ふーん」
「それに紫色の肌は暗殺には目立ちますし」

目に痛いあの色じゃあ宵闇に紛れてもくれないだろう。暗殺者として活動はできまい。そう思うとやはり彼は常にあの姿ではないような気がする。
じゃあなぜ変装なんかしているのか。
もしかして。

「ギタラクルさんお仕事しに来たとかですか」
「違う筈だよ。仕事のために資格を取りにきたって言っていたけど」

暗殺に必要なハンターライセンスとはこれまたいかに……。
とっておくことに越したことはないと思いますけど。


「…………イルミのこと気になる?」
「ヒソカさん、ギタラクルさんじゃあなくていいんですか…………。気になりますよお、そりゃあ。ヒソカさんのお友達ですから」
「教えてあげよっか、彼のこと」
「教えてくれるんですか?」
「君が知りたいなら」

怪しげな表情でヒソカさんは笑った。わたしは手を挙げて降参のポーズとる。

「遠慮しときます」
「そう? 残念だな」
「嘘教えるつもりでしたよね、ヒソカさん」
「人を疑うなんて酷い奴だね」

クスクスとからかうように笑って、ヒソカさんは指先へと視線を落とした。そして、小さく溢すように声を漏らす。

「じゃあ僕の友達じゃなかったら?」
「はい」
「気にならなかった?」

視線が合わさる。絡みあった瞳を見ているとこの世界がわたしとヒソカさんだけのように思えた。

「ヒソカさんはどう答えて欲しいんですか」
問いかける。
「どう答えて欲しいと思う?」
はぐらかされて逆に問題にされた。意地悪ですねえ。

「気になってませんでしたよ。ヒソカさんのお友達でなければ」
「そう」
「はい、そうですよお」

ヒソカさんは不機嫌そうに眉を潜めた。そりゃあそうだろう、わたしが答えたということはヒソカさんがそう望んだとそう解釈したということだ。八つ当たりされては構わないと、ヒソカさんにお風呂に行ってきますといったその時、真っ白い肌にある唇が動いた。

「…………」

心を読まれたみたいでムカつく。
そう言われた。
足を動かす。ハサミに触れたら、冷たくて気持ちが良かった。
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