皐月五日

□カウントダウン三日前
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あと3日…あと3日かぁ……う〜ん…、俺の時はトシの奴四枚刃の髭剃りくれたっけなぁ。
『すげぇの見つけたぜ近藤さん!』
とか言ってたけど、あいつどうやって『すげぇ髭剃り』って判断したんだろ。
トシってあんまり髭生えないじゃん?
大体すげぇ髭剃りってなんなんだと思ったけど、確かにすごい。軽いタッチで一発剃れば綺麗にいっちゃうからね。
でもこれは薄い髭の持ち主にはわからないはずじゃあ……。
あ、なんか一回気にするとすげぇ気になってくるな。
あいつどうやって判断したんだ。店員に言われるがままに鵜呑みにしたのか。
それとも試したのか。髭もまともに生えてないくせに。
どうやって調べたんだ!!
…あ、どうも、近藤です。
俺は今ない頭を捻ってひっじょ〜に悩んでいる。
あれだよ、俺の相棒の誕生日ってヤツだ。今考えていたのはまるで関係ないからね。
さすがに昔ながらの奴の誕生日となるとネタも尽きてくる。かといってスルーするのは俺の性分に合わん!
あーどうしたもんかねこりゃ。
今日は非番だから今日買いにいかなくちゃなんだよ。
これから出掛けなきゃなんだよ。いつまでも布団の上で悩んでるわけにもいかないんだよね。
『…とりあえず、顔洗ってくるか。』
ボーっとする頭をシャッキリとさせるべく、風呂場へ向かう。
俺はちゃんとトシからもらった愛用の髭剃りも持ってゆく。必需品だからな。

『あ、総悟。』
ガラリと脱衣所の引き戸をあけると、だるそうに総悟が歯を磨いていた。
『おはようごぜぇやす。』
『おう、おはよう。今日はやたらと暖かいなぁ。』
『昨日は暑いくらいでしたからねぃ。』
そう言う総悟の顔を鏡越しに見れば、顎下にうっすら髭が映えていた。
『やっぱり総悟にも生えるんだな。』
『何がですかい。』
『髭。』
隣に立つ俺を鏡越しにチラリと見た総悟は、近藤さんには負けますけどと答える。
『男だったら当たり前でさ。』
『だよなぁ。』
そこへガラリと音をたてて引き戸が開いた。
そこには起き抜けから俺を悩ませている男が黒い着流しをきっちり着こなし、手には隊服とタオルを持って立っていた。
『トシ!』
『あぁ近藤さんおはよう。』
『ちっ。』
『おい総悟なんで今俺の顔見て舌打ちした。』
トシは寝起きでいつもより悪い目付きで総悟を睨んでから、後ろ手で引き戸を閉める。
『話しかけんな土方。朝から余計に気分が悪くなる。』
『てめぇ朝からマジでムカつくな。』
忙しい時間も手伝って、喧嘩もそこそこ。トシは洗面台から離れて奥へと入ってゆく。
『朝シャン?』
『あぁまぁな。』
言葉少なくロッカーの影へと消えていった背中に『女みてぇな野郎でぃ』と総悟が悪態をついた。
俺はというと、違うところでそう感じながらトシが消えていった場所をジッと見つめる。
『…やっぱり生えてなかった』
『んあ〜?』
『髭。』
ああと唸った総悟が口の中のものを吐き出し、口をクチクチゆすいだ。
俺はその横でグイッと着物の腕をまくる。
そして蛇口に手を伸ばすしたところで総悟が再び口を開いた。
『土方さんは万事屋の旦那に女のフェロモン大量に作らされてますからねぃ。』
『え、万事屋に?なんで、どういうこと?』
『こっちの話しでさ。』
『にしてもよぉ、トシって体毛生えてるのか。』
『……………。』
『今まで気にしてなかったけど、生えてるよな。』
とそこへまたガラリという音が響く。
今度は浴室へと続く引き戸の音で、腰にタオルを巻いた裸の土方の後ろ姿が中へと消えていった。
『…生えてないかも、しれやせんぜ。』
『え。』
『下のアソコの毛も全部ツルッツルかもしれやせん。』
『いやいやまさか、さすがにあそこの毛は生えてるだろ。』
あまりのあり得ない発言に笑い飛ばすが、振り向いた総悟の顔にその笑いも引っ込んだ。
ニタリという擬音がピッタリと言おうか…、とにかく悪どく不安を覚えさせられるような笑み。
『ツルッツルかもしれやせんぜ。』
『いやまさか…。』
『どうしやすツルツルだったら。』
『…どうするって……。』
その言葉に、意味もなく生唾を飲んでしまった。
『俺が確かめさせてあげやすぜ。』
『馬鹿な事言うな、生えてるにきまってるだろ。』
一応そうは言うものの湯の音を聞きながら、興味と好奇心はしっかりと沸き上がっていた。
……総悟に勘づかれてたらごめんトシ。






あと、三日







あ!結局何も目処がたってねぇ!!無難にマヨでもやるかなぁ。








100501.

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