Omnivorous

□相愛
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身長差
11センチ


年齢差(予想)
8歳


地位
幕臣と仕事のないニートの助手


見た目
・・・・・・・・





「うわ…改めて考えると凹む…。」

ずり落ちる眼鏡を押し上げて、新八は自室の文机に片頬を沈めた。
窓の外に見える紫陽花が雨に打たれて嬉しそうに空を仰いでいる。
ジメジメした梅雨の季節同様、この若者の心の内もジメジメとして晴れないようだ。
ザァァァと降る雨音を聞きながら小さくついた溜め息。
そしてまた幾度となく浮かぶ言葉に新八は気分を落ち込ませた。

(やっぱりギャップがありすぎだよなぁ…)

浮かんでは消える…と表現したいが、浮かんだら浮かびっぱなしのまま消えない姿。
スラリと無駄なものがない身体に小さな顔。
その顔は男から見ても綺麗で整っていて、黒く艶めく錦糸を揺らす。
くわえ煙草が様にり、まるで男が立てば自分にはそこが絵画に見えるよう。
そのくらい、その人のまわりは美しく見える。

「あ、切なくなってきた。」

思い返せば返すほどキュウンと胸が締め付けられて、新八は胸のあたりを握り込んだ。
ずっとずっと憧れていたその姿に、胸が高鳴る。
刀一本で幕臣にまで上り詰めた男は、しがない貧乏道場を必死に立て直す自分にとっては尊敬する存在。
だからとそれを鼻にかける風もない。
ただ上様の為に大将の為にと刀を振るう。
―――そう、本来なら自分など相手にされないくらいの立場にいる人なのだ。
時代が変わり立場だなんて古いと言われるかもしれないが、それでも徳川家や松平家は庶民が簡単に会える相手ではない。
そんな人の護衛ばかりが、松平公とは膝を付き合わせて話す間柄だという。
自分とは、あらゆる点で恪が違う。

「………ホントに、僕でいいんですか?」

こんな地味でパッとしないダメガネで。
こんな事をグジグジ考えていてもしょうがないってわかってる。
こんなにたくさんのコンプレックスにまみれて苦しい思いをするくらいなら、やめればいいのにと言う自分も確かにいる。
それでもあなたが僕を選んでくれたりするから。
願望がどんどん欲張りになってゆく。
見てるだけで良かったのに。
目が合うだけで良かったのに。話せるだけで良かったのに。
傍にいれるだけで良かったのに。

「キスだって、したのに……。」

あぁもうどうしよう。
それだけじゃ足りない。
足りなくなってる欲張りな僕。

「…土方さん――…。」





僕はあなたを、抱き締めたいんです。









あなたに触れたい抱き締めたい。




――――――相愛。



互いに愛せど



儘にはできず。







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