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□こんな幸福論
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――――――SS
【こんな幸福論】
「あっ、こら銀っ…チャイナが起きるっ…。」
明日に非番を控え、万事屋にやってきた土方は銀時の寝室で二人仲良く布団を並べて横になっていた。
「大丈夫だって。」
「っ、大丈夫じゃねっ…」
しかし土方の布団にスルリと入り込んできた銀時の手が、始めは戯れのようにウツロウツロしていた土方の肩を撫で、頬を撫で、体を撫でているうちに確かな意思を持ちはじめてその体をまさぐり出した。
その手の動きで身体に熱を感じた土方は『まずい』と感じてその手をつかむ。
だがいつの間にか興奮しだしていた銀時にかなうわけもなく、今は組み敷かれ胸を這う手や舌にきつく唇を噛んで耐えていた。
(いつスイッチが入ったんだよぉぉぉぉ!!)
「こっそりヤれば起きねぇよ。」
「はっ…。」
「もう銀さん限界……。」
「ダメだぎっ…んあっ…あぁ!」
すっかり熱がたまった土方の中心に銀時の指が絡み、白い喉がクンとのけぞった。
「お前だってもう半起ちじゃん。」
「っの変態…てめぇな、か保」
『保護者失格』と言おうとしたその時――――。
「眠れないアル。」
「「ぎゃあぁぁぁぁぁ!!」」
スッと開いた襖からピンク色の頭のまだ幼い銀時の同居人、神楽が姿を現した。
土方のみならずこれには銀時も絶叫する。
「チャチャチャチャイナっ!」
「おぉぉいかかか神楽!これはなぁ、あれだ!プロレスごっこだ!」
「そ、そうだチャイナプロレスだ!だから早く向こうにって、イテェ!!万事屋てめぇ!何マジでいテテテテ!!」
銀時に見事な四の地固めをきめられて、土方の体がミシミシとなった。
もちろん立ち上がりかけていたモノはあまりの衝撃にお互い萎えている。
「ほーら多串君。ギブアップした方がいいんじゃないのー。」
「っかやろ!後で覚えてっあぁっ!…っく、ん!!」
「……………。」
あ、まずい。
なんか痛がる土方に俺のセンサーが反応…とか銀時がまた最低な事を思うと、神楽がまた「眠れないアル」と言ってフラリと中へ入ってきた。
「寝かせてみろよ、お前の全ての力を使って私を寝かせてみろヨ。」
ここへきて銀時の記憶が『まさか』と過去の出来事を掘り起こす。
「お、おい。またなのかよテメ…」
「あ?」
ヒクリと顔を強張らせた銀時に土方は眉を寄せた。
土方を拘束していた銀時の腕から力が抜ける。
「その布団寝やすそうアルな。それ私に譲れヨ。」
「やっぱりかぁぁぁぁ!!」
「はぁ?!どうしたんだよ!」
「最悪だ!迷惑以外の何者でもねぇ。よりによって今日それかよ!ありえねーよ、林家ペーパーがピンクを捨てるくらいあり得ねぇよ!!」
「おい銀時!ちゃんと説明しろや!」
「眠らねぇんだよ!寝るまで人の安眠妨害してくんだよ!鬼のように寝ないくせに突然コロッと眠ってこっちが眠れなくてもお構い無しなんだよぉぉぉ!」
「うるせーヨこの駄目天パ。」
神楽に蹴られて叫び声をあげてゴロンと土方の上から転がった銀時に『確かにうるさかった』と、土方も胸中で頷く。
「っていうかなんだよ、そんな事か。」
「は?」
土方の予想外の言葉に布団に顔を埋めていた銀時が顔をあげた。
「ほらこいよチャイナ。」
そう言って自分の隣に一人分の空間をつくり、掛け布団を手繰り寄せる。
「どけヨ。そんなんじゃ狭くて寝れないネ。」
「寝てみて狭かったら蹴り出せよ。いいから来いって。」
「……………。」
「ひ、ひじかたくん…?」
少し考えた神楽は『まぁ試してみるか』と土方の隣に潜り込んだ。
「レディに手ぇだしたらただじゃおかないアル。」
「出さねぇよ。」
小さな頭を胸に引き寄せて、土方はポンポンと背中を叩いてやった。
穏やかな心臓音と時折しゃべる土方の低い声が神楽の耳に優しく響く。
「ひ、土方…?そんなんじゃ寝ないと思うけど。」
「寝るよ。」
「いや寝ねぇよ、そんな羨まし…。前回銀さんがどれだけ苦労したか。」
「お、寝た。」
耳を疑う言葉に銀時が『うそぉ?!』と 言って覗きこむと確かに寝息をたてて眠っている。
「マジでか。」
「あの総悟ですら、こうするとよく寝たんだよ。」
「えっ、お前沖田君にもやってたのかよ。」
「ガキの頃な。」
そんな慈愛に満ちた顔でガキと言われても面白くない。
お前はマリアか、母性の神かと突っ込みたくなる。
どうにもモヤモヤしたものが銀時の胸に広がった。
「………今度俺にもやれよ。」
「………アホか。」
そして眠りに落ちる二人を側に、銀時は下半身もモヤモヤさせながら朝まで眠れなかった。
(クソ、親父なんて所詮こんなもんだよ。)
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