Thank
□ゆらゆらり
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―――――SS
【武州編 ―十年前―】
おい土方
お前も男だからわかるだろぃ。
俺はこんなナリで、体の大きさなんてお前の半分かそこらだけど……
性に目覚めるのは早いんでさ。
お前も男ならわかるだろぃ。
〜ゆらゆらり〜
道場のみんなが酒を飲んだ。
もちろん俺は酒のつまみだけを食べてそれを見てたんでさ。
「う〜……。」
近藤さん達が『買い出しじゃー。』と、ドヤドヤと部屋をでていくと俺はうんうん唸る土方の野郎と二人残された。
今日初めて近藤さんに酒を飲まされ、まだ15の土方はすっかり酒に飲まれている。
「…………。」
横たわる背中を見ていると、モゾリと動いてこちらを向いた。
「………そお、ご。」
うっすらとあけられた瞳が酒に揺られて溺れている。
男のくせにいちいち色っぽいんだよ。
いつもの瞳孔はどこいったい。
「………そおご、来いよ。」
そう言ってちょいちょいと手招きされた。
「………先輩はどうしたい。」
「センパイ、来てくだせ。」
………ずりぃでさ。
あんた絶対子供には毒ですぜ。
有害すぎでい。
俺は引き込まれるように動く足を苦々しく感じた。
「ぅわっ。」
すぐ脇までくると伸びてきた手に体をとられ、胸の上に抱え込まれる。
「離せコノヤロッ……!」
俺の心臓がドクンとはねて、跳ね馬のように暴れ回る。
俺自身も子供の力ながら抵抗するが、ギュッと力を込めて抱えられた。
「あったけ。」
「おい、なんのつもりでっ……。」
「子供体温サイコー…。」
「おいコラ土方!!」
バクバクする心臓音が知られたくなくて、俺は土方の上で動きづらい体で暴れた。
「おいひじっ………。」
「………ス―…。」
あまりにも反応が無くて耳をすますと、心地良さそうな寝息が聞こえる。
俺はなんだかやたら恥ずかしくて、気持ち良く上下する胸に顔をうずめた。
「いつか絶対襲ってやるっ……。」
いつもは嫌いな酒臭さを胸いっぱいに吸ってやる。
「おい、トシ!酒買ってきた……。」
襖を空けてでかい声を上げた近藤は、中の様子を見て口をつぐんだ。
「近藤さん、どうしたんですか。」
「しー!」
後から続く門下生を近藤は唇に人差し指をあてて黙らせる。
その音がすでにでかい事には気づかないようだ。
「違う部屋使うぞ。」
そう言われて皆が中をのぞくと…
「うわ…。」
「可愛い〜。」
そこには仲良く抱き合いながら眠る土方と沖田の姿。
道場に行ってろと皆を先に行かせて、近藤は中に入った。
そして押し入れから掛け布団をとりだし、二人にそっとかけてやる。
「……おやすみ。」
―――いつか俺の胸の中で眠りなせぇ。
end.