short 2

□消えた副長を追え
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空がぐずつき、今にも泣き出すんじゃねぇかって寒い日に、閑古鳥が鳴く万事屋の戸が荒々しく叩かれた。
その性急さにいささか気分を害しながら、喧嘩腰にその戸を開けてみれば見知った顔…というには地味すぎて記憶が薄く朧気すぎるのだが、常日頃恋人の周りにかいがいしく付き従う男がいた。
戸をあけるや否や口を開くその男、ジミーくんは

「依頼を、しに来ました」

だから早く中へ入れてくれと口早に、しかし静かに、辺りに必要以上に警戒しながら敷居を跨ぐ。
そしてこちらの反応を待たずに図々しくも奥へと進む。

「不法侵入で訴えるぞコノヤロー」

いつにない雰囲気の男の背中に言ってみれば、こちらのおふざけには全く付き合う様子はないようで、有無も言わずに静かに応接間兼リビングにあるソファーへと座った。
一体何があったのかは知らないが、ここでジミーくんの様子に釣られるようなお人好しでも肝が小さいわけでもない。
いつものようにのらりくらりとその対面に位置するソファーに腰をかけようとすると、その動きに苛立ったのか一秒でも惜しいと言うように、俺が尻をつけるよりも早く依頼主は圧し殺した声で口火を切った。
厳密に言えば依頼主は目の前にいるジミーくんではなく類人猿最大の猿、学識名ゴリラゴリラゴリラである。
その、依頼内容とは、


『副長を、捜し出して欲しい』


という耳を疑うようなものだった。





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