short 2
□わかりにくいけど
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昼下がりのかぶき町。
市中を見回る土方は、今日も銀色のモフモフした頭を揺らす男にでくわしていた。
「おい糞天パ、いい度胸してるじゃねぇか!」
「相変わらず血圧高いね〜。糖分を分けてあげようか?あれ、逆効果か?」
土方が声を荒げて銀時にくってかかると、銀時は青筋をたてて静かに反論した。
「いらねぇよ。てめぇの糖分なんかもらったら、糞天パの死期が伸びるだろ。」
「カッチーン。その糞天パが死んだら一番悲しむのはどこぞの瞳孔野郎のくせに。」
「誰が瞳孔野郎だ!!俺が悲しむわけねぇだろ!」
「銀さん別に土方なんて言ってないけど。なにそれ自覚してるわけ?」
ぎゃあぎゃあと喚き合う2人を見て、山崎は深い溜め息を吐く。
(…飽きずによくやるなぁ。)
山崎は土方に伝えたい事があって、市中をかけずりまわってここまできた。
携帯へ何度かけても応答がないことに不安を覚え、必死に走り回ったのだが………
(結局これかい。)
やっと見つけた土方は、道の往来で銀時といがみあっていた。
「副長…。」
山崎が勇気をだして話しかけてみるも、銀時との口論に夢中な土方はまったく気づかない。
「だったら…俺が殺してやるよ。今、ここで!」
そう言って土方はスラリと腰に差していた愛刀を抜いた。
どこでどうしたら、たかだか喧嘩で抜刀するにいたるのか…。
山崎は一度このプッツン副長の頭の中を見てみたいとあきれかえる。
「なに、また銀さんに刀折られたいの?」
「あの時は調子悪かっただけだ!」
「そういうの負け犬の遠吠えっていうんです〜。」
「てめぇ、上等じゃねぇか…。」
銀時の挑発に土方の怒りがさらに炎上した。
……これでもこの2人、一応は互いを思い合っているのだ。
形式的にいえば、恋人同士。
どうにも甘い雰囲気など感じない上いつもいがみ合っているため、近藤にいたっては『犬猿の仲』だと思っている。
2人の関係に気づいている山崎ですら疑いたくなるが、れっきとした恋人同士だ。
山崎は『こんなに喧嘩ばかりしているのにナゼ?』と疑問に思っている。
「山崎ぃ!!」
「え、あ、はい!!」
「お前の刀貸せや。」
「刀…ですか…?」
土方にいきなり怒鳴られ「俺に気づいてたのかよ!返事くらいしろや!!」と、山崎は突っ込みたかったがそれも不毛だと思い言葉を飲み込んだ。
「銀さんこれでいいよ。」
そう言って銀時は腰に差していた木刀、愛称『洞爺湖』を右手にかまえる。
「ハンデ。」
「舐めてんじゃねぇよ糞天パ。おい山崎、早くよこせ。」
そう言って土方は山崎に左手を差し出す。
「でも副長…。」
「でももヘチマもあるかぁぁ!!!」
顔を赤くして叫ぶ土方だが、山崎の次の言葉に顔を青くした。
「沖田隊長がまたバズーカで民間人の家ふっ飛ばしましたけど。」
「……………………え。」
土方の顔がひきつり、元気よくたてられていた刃先が下へ向く。
「そ、総悟がまた、民間人の家を……。」
「ふっ飛ばしました。」
口をパクパクさせる土方の言葉を山崎が引き継ぐ。
銀時は面白くなさそうに顔を歪めた。