short 2

□承
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はじめは異常なほどに意志を映した瞳への好奇心だったのに。
よりにもよって……なぜ、お前がそうなんだ。
足元に広がる一体一体が、ボロボロと崩れて砂になり風と共に去ってゆく。

一体。

一体。

消えてゆく。

荒野の地面が丸裸にやってゆく。
空は曇天。
厚く覆われたその先には太陽がある。
そして一つ……、残る体がムクリと二本の足で立ち上がった。

「…………土方。」

「………………。」

黒いズボンと、スカーフに裾の長い独特な上着。
纏うモノは紛れもなく憎き敵を護る証。
艶やかな黒髪が白い肌をより白く透明に見せ、まるで造り物のようだ。
整った顔の中でも印象的な切れ長の瞳が真っ直ぐこちらを見ている。

――――この強さに対する、ただの好奇心だったのに。

「土方。」

幻とわかるそれに話かけるのは、これが……初めての事ではない。
何度話しかけても答えてくれなかったソレだけど。

「……………。」

「土方……。」

なぜお前は幕府に付いた。
刀が欲しいだけなら、こちら側に来れば良かったのに。

「俺は近藤さんの為に、振るう刀が欲しいだけだ。」

「時代遅れな野郎だなぁ。」

人の事など、言えないのだけれど。

こいつが、幕府の人間でなければ。
先に出会っていれば。
共に戦っていれば。
かつてのあの場所で共に時間をすごしていれば……。
こいつのこの目は、俺が見るものを一緒に見ていたのだろうか。

「お前はその理由を亡くしたらどうするんだぁ?」

「変わらねぇ。俺は俺の大将の為に生きるだけだ。」

その言葉は、俺が想うその人に向けられただろうか。

「………………。」



――――――望むか、それを。

俺は望むのか。
同じモノを見れる男を、宿敵として相反する同類する男を。

本来なら求めるを許されない男を?

何度よぎった疑問か知れやしない。
浮かんでは消え、消えては浮かんだ。
それでも答えはいつも一つだ。




「―――――欲しい。」





【君ヲ想フ・承】






どうすればお前はこの手に堕ちてくる?



俺はお前と同じものを見てみたい。







「なぁ………、俺と世界の果てへまで行ってみねぇか。」



土方。







……――――――土方。






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