short 2

□転
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「な、んだこれ………、どぉいう、ことだよっ……!!」

椅子に座る土方はテーブルにあるカラクリに映しだされる映像を凝視したまま、震える声を絞り出した。
そこに映されるのは高杉が「攘夷連中から手にいれた」という夕焼けに赤く染まる大江戸駅。

「俺も一瞬自分の目を疑ったぜぇ。」

土方の傍らにたつ高杉がいつになく色のない声をだす。

「嘘だっ……!俺はこんなの信じねぇっ!!」

「まぁそう言いたいのはわかるがな。」

全身を震わせ、絶望と憤怒をその顔に宿して土方は激昂した。

「こんなのあるわけねぇ、有り得ねぇ!!高杉っ……!てめぇが仕組んだんだろぉが!!こいつがこんな事するわけねぇんだよ!!!ぶっ殺してやる…今ここでてめぇをぶっ殺してやる!!!」

「おいおい逆恨みはやめてくれよ。土方ぁ、お前この銀髪の男と知り合いかぁ?」

ガタンと威勢よく椅子を倒し立ち上がった土方は、傷の痛みも気にせず高杉につかみかかる。鎮痛剤で痛みを和らげていようが、身体に負荷を与えれば雷に撃たれたような痛みが走る。
だがそれにも構わず今にも相手を殺してしまいそうな土方を、高杉はやられるがまま余裕の表情でいなした。

「俺はこんな男知らねぇ。知らねぇ男を、使いようがねぇだろ?」

「でたらめを言うな。」

土方は射殺さんばかりに高杉を至近距離から睨み付ける。
ギリギリと胸元を掴み上げる手にも力が入り、高杉は多少の息苦しさを感じた。
しかしあえてそれを払いのけず、その目だけで人を殺せそうな漆黒の瞳をしっかりと見返す。

「でたらめなんか言ってねぇ。俺はそんな男知らない。この映像で、今、初めて知った男だ。」

「じゃあっ……、じゃあなんで銀時が近藤さんを刺したりするんだっ――――!!」

「………………。」

怒声を発する土方は、その力強い声とは反対に今にも崩れ落ちそうだった。
総てをつんざくような悲痛な叫び。

――――――あぁ、可愛そうな土方。

「てめぇの差し金でなけりゃ……、こんな事になるはずがねぇっ……!」

「…………その男、知り合いかぁ土方。」

静かに問う高杉を土方は何も言わずただただ睨み付ける。
高杉はその瞳に答えて「そうか。」と呟いた。

「初めからそのつもりで近づいたのかもしれねぇなぁ、そいつ。」

土方の瞳が激しい怒りと、深い悲しみをうつす。
体は激痛を訴えているであろうに、全身にこめる力は緩めない。
震える体は、きっと痛みからではないのだろうけど。

高杉はその身体に、ゆっくりと両手を回して優しく包みこんだ。

「っ…、はな……!」

「可哀想になぁ。」

――――さぁ、堕ちてこい土方。

「裏切られたんだよ。お前の気持ち、俺にはわかるぜ。」

囁くように耳元で囁くと、強ばる身体がピクリと動いた。

「はなせっ………。」

堕ちてこい、俺の中に。

俺にお前の気持ちがわかること、お前にはわかるはずだ。

困惑したように身動いだ土方の体を、高杉は力を込めてきつく抱いた。
願いと、想いを込めて。

「なん、でっ…、てめぇがやったんだろぉがっ……!」




――――――なぁ、頼む土方。

堕ちてきてくれ。




「なんでっ……ぎんっ…、ぎん、なん、で――――。」






カラクリの映像には銀時が近藤を刺したシーンが流れていた。






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