short 2

□終 前編
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簡単だろう、銀時。





―――低く電話越しに聞こえる声から、人を食ったように笑む口元が容易に想像できた。






簡単すぎてお前にゃ失礼な『頼み事』かもなぁ。
なぁ、白夜叉。
そういやあいつはお前が何者だったか知ってるのかぁ?


『………………。』


………可哀想な野郎だな。
何も知らずに、喰われたのか。
何も言わずに食ったのか。

でもあいつは優しいからなぁ、別に言っちまえばいいんじゃねぇのか。問題ねぇだろ。


『土方には…何も言うな。』


馬鹿だなてめぇも。
それはくだらねぇ保身の為か?

『いいから土方には何も言うんじゃねぇ。』


…………………。


『………絶対にだ。』


知られるのがそんなに怖いか。


『あいつが、かつての俺の仲間を傷つける事に苦しむからだ。』

―――たいした自信だと、高杉に面白くない思いがこみあげた。
ムカつく。
近藤の為に人を斬り、心ではテメェを想い傷つくのか。
自分の為に傷つくとわかりきっているその傲りがムカつく。
誰がテメェの仲間だと口をつきかけたが、自分にさえ気持ちの隙を見せた男の顔がよぎる。
愚かすぎるほどに甘く、馬鹿な男。
剛毅で強い想いと共に深い人情を同居させる男。

お前の位置は俺だ。
俺がいるべき位置だ。
そして必ず、近藤からも奪ってみせる。


『…―――いいか高杉。』


銀時の声が、一段と凄みを増した。


『土方には手をだすな。絶対にだ。傷つけたら、ただ殺すだけじゃすまねぇからな。』


そう言うお前が、あの男をどん底に突き落としに行くんだぜぇ?


『お前が近藤を殺したら、何もしねぇよ。』


まぁ元から、大事にするつもりだけどよ。



安心しな。






お前がつける傷も、しっかり俺が癒してやるよ。






【君ヲ想フ・終】前編







あいつは俺と、同じ景色を見るんだから。














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