short 2

□終 後編
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嘘だ!


嘘だ嘘だこんなの全部嘘だ!!
銀時がこんなことするはずねぇ、そんなはずねぇんだ!

『土方クン』

『あ…ぅあっ…』

右手にある、刀が赤く濡れている。
銀色の髪が、赤く濡れている。

『あぁぁぁぁ!』


(裏切られたんだよ)


違う!


(裏切られたんだよ)


違うっ……違う!!
脳裏に過る声をいくら否定しようと、目の前に流れる光景が変わらない。
横たわる、大将が……

『近藤さんっ…』

一人だった俺を拾ってくれた近藤さん。
食い物も寝床も温もりもくれた近藤さん。
夢を、仲間を俺に与えてくれた近藤さん。

『こ、ど…さっ……』

大切な大切な大将。
たった一人の、俺の大将。
たった一つの、俺の生きる道だった。
あんたの歩く道だけが、俺の生きる道だった。

『……っどさ…』

大好きな大好きなたった一人の……
唯一無二の、俺の大将






それを









(裏切られたんだよ)


『土方クン、大好きだよ』




――――――殺された。




(お前の気持ち、俺にはわかるぜ。)




殺されたっ…




(お前の痛みはわかるぜぇ)





―――今、


目の前にいるオトコに





「迎えに来たぜ。」

痛みを覚悟した刹那、ドウと倒れこんだ綾小路の影から現れた光る銀色。
鼻に残る硝煙の中に漂う懐かしい匂い。
己の目を一瞬疑ったが、そこには確かに望んで止まなかった男が立っている。
瞬時に脳が溶けるような感情が沸き起こった。

この、見覚えのある優しい笑みを浮かべるオトコに近藤さんが殺された。

なんでどうしてここにいる。
なんでお前がここにいるんだ!ノコノコと現れやがってどういうつもりだ。
俺が今、どんなに




(復讐しようぜ。)




どんなに―――





「……さかた、ぎんとき」






(俺が全部、壊してやるよ)






「ひじか」

「殺す」

低く唸る声が響いた。
前髪の間から覗く黒い瞳が、獰猛な殺気を伴って銀時を真っ直ぐ射ぬく。
憎しみと狂気に染められたその瞳。
銀時の背筋をゾクリとした悪寒が駆け抜けた。
一瞬、血の気がひいて身体が浮遊する。

「お前を殺す。」

「おまっ…何言ってんだオイ」

「とぼけるんじゃねぇよ」

ゆっくりと立ち上がった土方は、銀時を見つめたままギリと奥歯を噛んだ。

「てめぇで近藤さんを殺したんだろうが!」

「―――っ」







(裏切られたんだよ)






【君ヲ想フ・終】後編









必ずこの手で精算する。












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