Parallel
□おまけの10月11日
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「風呂サンキュー。俺パジャマなんてすげぇ久しぶりに着たわ。」
「……おー…。」
皆さんこんばんわ、ここから進行を務めさせていただく坂田銀時です。
時刻は俺の誕生日を過ぎて、午前1時半になろうとしているところだ。
俺が1人で自室のベッドに腰をかけて雑誌を読んでいたところに、ガチャリと扉を開けて入って来たのは俺のパジャマを着た風呂上がりの土方だ。
俺はもっぱら中学のジャージを寝間着がわりにしているもんだから、パジャマ使わなくて余ってたんだよね。
コットン素材の水色のパステルカラーのパジャマ。
他意はなくなんの気なしに貸したんだけどさ…
「おふくろさんには、ホントに明日の朝に言えば平気なのか?」
(なんつーか、エロイな……)
なんだろう、このムラッと来る感じ。
え?パジャマってこんなに萌えアイテムだったっけか?
ほっぺもほんのりピンクでツヤツヤしてるし、なんか全体的にエロく感じるのは気のせいでしょうかお父さん。
「坂田?」
「え?」
「だからおふくろさん。あ、おじさんもか。朝でいいのか、俺の事言うの。」
「あ、あぁ、もう寝ちまってるし。朝言っても特に問題ねぇから心配すんな。」
「ホントに?やっぱり迷惑かかってるんじゃねぇのか?」
「だぁからお前は心配性なんだよ。」
あっぶねー、全然聞いてなかった。
完全にパジャマ姿に邪な思いを抱きかけてたわ、いかんいかん。
気にしいの土方は相変わらず不安を顔にひっつけて「そうか…」と呟くと、俺の隣に腰をおろした。
ギシリとベッドが軋んで沈む。
……おっと。
一瞬動揺したが、俺は出来る限りなんでもないふりをする。
「何読んでんだ?」
「ボクシング雑誌」
「へー」
興味津々と土方が俺の膝に乗る雑誌を覗き込んだ。
風呂上がり独特の体温がジワリと伝わり、石鹸の匂いがフワリと香る。
(……いい匂い)
あー、まずい。
これってすげぇまずくねぇか?
さっきはかなり舞い上がってたから考えなしに『泊まってけ』なんて言っちまったが、これ銀さんけっこうピンチ。
眼下では洗い立ての黒い髪を揺らす土方が「好きなボクサーとかいんのか」とか「坂田って何キロ級?」とか聞いてくる。
しかし俺は「あー」とか「うん」とか半ば上の空でしかそれに答えられない。
駄目だと思いながらパジャマの上から土方の体のラインをなぞってしまい、思考が完全に視覚に奪われているからだ。
(……肩細いな)
やってるスポーツの違いからか、土方の身体は俺に比べるとずっと薄い。
(……………)
パジャマの隙間からチラリと除く鎖骨や、黒い髪の先がかかる白い項。
そして、風呂上がりで赤く血色の良くなった唇。
視線は自然とプクリと膨れるそこで止まった。
今さっき、まぎれもなく自分の唇と触れあったのだ。
可愛くて、目の前で泣いたこいつがどうしようもなく愛しくて、気付いたらキスしていた。
信じてくれねぇかもしれないが、キスするつもりなんか全くなかったんだぜ。
土方の馬鹿、あんなの反則だろ。
必死に話すこいつを見てたら俺の中がグワーッと盛り上がっていって、可愛くて可愛くて。
吸い込まれるように一生懸命に動く小さな唇に近付いてしまったんだ。
ほとんど、無意識で。
あの一瞬、俺は理性を失っていたのかもしれない。
我に返った瞬間、頭が真っ白になって血の気が引いた。
やっちまった。ついにやっちまった。そう思った。
だって土方震えてるし。
ビックリしながらプルプルしてるし。
駄目だもう終わりだ今度こそ嫌われる。
―――そう、思ったのに……。
こいつは「ひいた?」と聞いた俺に首を振って抱き締め返してくれた。
(とうことは、そういうことだもんな。完全にそう思っていいって事だよな。)
「うわ、こいつ怖い。やっぱり黒人は迫力あんなぁ」
「……………」
俺は自惚れていいってことだよな?
俺達は互いに、そういう『好き』だって。
柔らかい土方の唇の感触が思い起こされる。
唇が乾いて、俺は無意識にペロリと舌で舐めて湿らせた。
あー、まずい。
もう一回チューしてぇ。
だってすっげぇ気持ちよかったんだもん。
フニッて。
あーしたいしたい、土方とチューしたい。