Parallel
□こーきしん王子
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「デートしてみてぇ」
「デート…ですか?」
秋の昼下がりひたすら勉強にいそしんでいた十四郎王子がポツリと呟いた。
呟いたというか、いきなり呼び出されて不遜な態度で呟かれた。
「どうしたんですかいきなり。デートなんて」
似合わないとポロリとこぼれそうになったが、すんでのところでそれは飲み込む。
というか、え?デート?
不肖銀時23歳、十四郎王子に仕えて苦節17年。
蝶よ花よと育ててきたのだから(というか英才教育)この王子は女というものに全く免疫がない。
好き勝手させてはいるが、変な虫につかれたら困るからだ。
そっち方面には特に王にきつく言われている。
そりゃいい歳なのだから女に興味が出てもいいわけだが…。
なぜ、いきなり。
今までそんなそぶり全く見せなかったじゃねぇか。
「どなたか気になる女性でも?」
「ちげぇ、晋助に馬鹿にされた。」
「あぁチョウシュウの第一王子ですか。………昨日は姿を消したと思ったらあの馬鹿王子に会っていたのですね。」
「勝手に消えた事は謝ったじゃねぇか、小言も充分聞いたんだから怒るなよ。無事に戻って来たんだからいいだろ。」
「何度同じ事をすれば気がすむのか」
「だってあいつが誰にも言わずに来て欲しいって密書まで送ってきたんだぜ。」
あー密書…密書ねぇ…。
頭を抱えたい思いになりながら、それは盛大な溜め息として外に吐き出す。
「だからと言ってノコノコ行く人がおりますか。貴方はもっと立場をわきまえるべきです。いくら今友好関係といえど、いつなんどき情勢が変わるかもわからないですし、いつまでも子供の友達同士のつもりじゃ困ります。大体一人でフラフラと出かけたら危ないと何度言ってると思ってるのですか。」
「わかったわかった、あーもーテメーは本当にうるせーなー」
こっ、この馬鹿王子っ…。
人がどれだけ心配したと思ってんだ。
しかもあのチョウシュウの王子に呼ばれて出かけるなんて、それだけで危険極まりない。
あいつどっからどう見ても両刀だろ!
「とにかく俺はデートしてぇんだってば」
(それにこの我が儘王子…)
「なぁ銀時ぃ、なんとかなんねぇ?」
「なんとかと言われましても…」
(自分が狙われてんの気づいてねぇんだもん)
「こればっかりはご自分でなんとかしていただくしか。」
「げ。マジか!!ってことはぶっつけで晋助とデートかよ!」
「――――――は?」
え?今この子なんつった?なんて言ったの?
晋助とデート?ナニソレ
「あぁ畜生。まぁなんとかなるか俺だし」
「ちょ、あの…お待ちいただけますか?」
「あ?」
「晋助…様と、デー…」
「デート」
「そう、デート。それです。え?なんでそうなったというか…」
「晋助がしようって」
「いやいやだからなんでそう…いやおかしくないですかそれ、どんな展開でそうなったんでしょうか」
「だから晋助がしようって」
「だからなんでそうなったんでしょうかって聞いてんでしょうが!」
「あぁ!?なにいきなり怒鳴ってんだテメェは!」
「危ないからに決まってるでしょうがぁぁぁ!」
「危ないってなんだよ!晋助は危ねぇなんて言ってなかったぜ!」
「そりゃアイツは言わないですよ!大体デートは男同士で行くものじゃないでしょう!」
「嘘つくんじゃねぇ糞天パ!」
「嘘!?」
「晋助は男同士でやる事だっつってたぜ!」
「っ―――――!」
「それをなんだテメェは役にもたたねぇくせにガミガミとっ」
(も、もしかしてこの我が儘王子………)
「俺は絶対に晋助には負けねぇ!!」
「……あの…話の腰を折るようですが、王子は『デート』というものが何かわかっていらっしゃるのでしょうか?」
「真の力を試すゲームだ」
「・・・・・」
なんだ真の力を試すゲームって。
何を試すつもりだ。
男の甲斐性でも試すつもりか。
デートも知らないってどういうことだ。
なんとなくわかるけども。
縁がなかったから知る必要も無かったというか、俺も誰も教えてないからアレだけれども。
でもよく街におりてるんだから知っていてもよくないか?
言葉くらいは耳にしたことあんだろ。
頭いいくせになんで覚えてないかなぁ、この子。
「わかりました。すぐ断りの連絡をしておきます。」
「は?なんでだよ。もう約束しちまったもんを断ったりできねぇよ。」
「なにも当日にキャンセルをしているわけではないのですから大丈夫でしょう」
「馬鹿言ってんじゃねぇ。男に二言はねぇんだよ」
こいつ。
なんで我が儘なくせにこうも律儀できっちりしてんだ。
このど直球に誠実な点は自分が一番理解している。
「ではせめて俺がついていきます。」