Parallel

□恋コイ
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「さか…た…」

「ひじかた…」

薄暗い部屋の中、一組の布団が敷かれている。
その布団の上ではYシャツ一枚というしどけない姿で土方が横たわり、いつもは鋭い目をすっかり蕩けさせて俺を見上げていた。
――そう、見上げたのだ。
俺はというと土方に覆い被さり至近距離でその視線を受け止めている。
回りには誰もいない。
互いの鼓動だけがドクドクと辺りに響く。

(こ、これは――…!)

どう見ても誰が見てもその流れ!
俺は期待に胸を高鳴らせ、呼吸を荒くした。
ああ、クリスマスのあの日から早半年がたとうとした今、俺達はついに、ついに、1つになろうとしている!

「坂田、俺、ずっとお前に触って欲しかったんだ」

「俺も、お前に触りたかった」

「お前の物になりたかったんだ。早く、早く、お前のものになりたかった」

「ひ、ひじかた…っ」

そう言って、土方の腕が俺の首にスルリと回る。
ゆ、夢みたいだ…こんな積極的に土方が俺を求めてきてくれるだなんて!
ありがとう神様!
この日を俺にくれてありがとう!!

(坂田銀時、今日ついに大人になります!)

さよならチェリー、今までお世話になりました。
俺達は二人で一緒に次のステージへと進みます。
腕の中にいる土方は黒い瞳を潤ませ、不安そうに身を捩る。
壮絶可愛い。

(むふー!むふー!いただきますうぅぅぅ!!)

「土方…優しくする」

「嬉しい。早く、こいよ…」

股間が爆発するかと思った。
いやむしろ爆発した。
色っぽい声で囁いた土方のせいで俺の理性は完全に吹っ飛び、小さくて形のいい唇にぶつかるように口づける。

「んっ…」

(ぬあぁぁぁぁぁぁ!!)

「ふ、ん…ぎんっ…」

もう無理もう我慢できない。
なんだその鼻に抜けるやらしぃ声。
腰にくる。理性直撃。
今まで舌を入れたい入れたい思っていたけどずぅーっと我慢してきた。
でもいいよねもういいよねだって大人の階段登るんだもんディ、ディープキスくらいっ…。

「とうしろっ――…!!」

勢いづいて土方を抱え直し、薄く開けた口を近づけたその瞬間。

「ぎピピピピピピピピ!」

「・・・・え?」

―――土方のプリンと瑞々しい可愛らしい唇から無機質な電子音が流れ出てきた。

ピピピピピピピピピ

「………………」

はっと気付けば目の前には見慣れた天井が広がり、土方の姿などどこにもない。
窓からはカーテン越しに朝日が注ぎ込み、外からは朗らかな雀の声が聞こえる。
ああ、なんて爽やかな朝なのだろう。
え、ちょっとこれどういう事。土方はどこですか土方をだしてください。
しかしいくらそう願っても、俺は自室のベッドに一人で横たわっているだけで何もでてくる気配はない。
なんだこのがっかり感。

「……夢…」

まぁそうだよな夢だよなわかってるよ土方があんな積極的にぐいぐいくるわけねぇもんな。
だからってこの夢何回目だよ。
途中で気づけよ、いい加減気付こうよ俺。
いやでも幸せな夢だけどさ、なんなら最後までヤッてから起きたいけどさぁ!

「…それはそれで虚しいか……」

ハァとため息をついていつまでも鳴り続ける目覚まし時計を叩いて止める。
畜生こいつがいなければ先が見れたのに。

「ったくついてね……ん?」

身を起こそうとして、俺はふと、ある気持ち悪さに気づく。

「…………まじかよ」

一気に、気が重くなった。
あー!ここんとこ毎日じゃねぇのかこれ、隠れて後始末すんのも容易じゃねぇんだからな!
どうやらこれだけは夢の通り、股間はしっかり爆発していたらしい。
ベットベトのグッチョグチョだ。
まぁ確かに気持ちよかったけどね、スッキリしてるけどね!
あーもう最悪!!

「というか俺の体大丈夫かなぁほんと…」

欲求不満っつぅかなんつぅか、理性が負けていつか土方を襲っちまいそうで恐ぇんだけど。
そりゃ、俺としては早く先に進みたいし土方を抱きたいけど、あいつがそこまで望んでるかなんてわからねぇし。
襲いかかった後にそんなつもりじゃなかったなんて嫌われたら、俺もう立ち直れねぇよ。

(だから、今はこのままでいいんだ)

土方が隣で笑っててくれれば、それだけで幸せだし。
なんて賢者みたいな事思いながら、もうだいぶ過ぎた。
壁にかけてあるカレンダーに目をやれば、それはもう4月の終わりを示している。
早いものだ。
付き合いはじめて半年。
学年が上がって1ヶ月がたとうとしている。

(もう5月か)

桜も散って、春も終わろうとしてんだな。
5月といえば連休があるじゃねぇか。
このチャンスに土方と一緒に温泉旅行とか行きてぇなぁ…って、ん?

「5月?」

なにかがひっかかり俺は首を傾げた。
しかしそれがなんなのかは時間をあまり要する事なく、すぐに思い当たる。
5月、と、いえば、

「ああぁぁぁ!」
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