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□訪問者
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「あのさ、どうしたらそんな風になるの?」


今日、突然アヤが泊まりに来た。アポなしで。もう23時。携帯あるんだから連絡ぐらい、と心の中で呟く。
それでも来てくれたことがちょっと嬉しくて、そのまま部屋に招き入れる私は、アヤに弱いなー、とぼんやり思う。


「あー…。」


この大学のため田舎から上京し、初めて知り合いがいない状態からのスタートで、不安だった。
でも、このアヤと知り合えたおかげで、着実に友達も増えてとても楽しい日々を過ごしている。新しい大学生活が始まって1ヶ月。

この1Kの私の部屋は、人が来ることを前提としていない。今まで自分の部屋に人が来たことがなかったし、どちらかというと行く側だったからだ。

この部屋は学校から近いため、あそこの3階の一番端に住んでるんだ、なんて会話をしたから、いつか来るとは思っていた。
だけど私にとってそれはもっと先のことだと思っていて、今回のアヤの訪問は予期せぬことだった。
そのため普通に受け入れた自分自身に実は驚いている。そして、普段からマメに掃除をしていて良かったと思った。

だが、一人暮らしを始めて、楽だという理由で高校ジャージをパジャマ代わりにしていた。
そのジャージの膝は、小学生並みの実に残念なやぶけ具合である。
アヤが来ると分かっていたら、違うジャージはいたのに…!
とても恥ずかしくて、顔が熱い…。きっと赤くなってる。

それに気付かれたくなくて。とにかくどうぞ、狭いけど。と部屋の仕切り戸を開けた。

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