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□目撃者
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今日は、講義登録をしに来た。これからこの大学に編入学することになる。
だけど元々この大学の付属高校出身だったし、度々来ていたから様子も知ってるし、ほとんど何も変わらない気がして、期待なんてしていなかった。
だからこそ、別の大学に進学したのだけれど、それは私にとっては無駄な時間を過ごすことと同じだった。
それでこの大学に改めて3年次編入という形で入学してきたのだ。

入学式は正直ダルかったし、きっと講義登録もメンドクサイ。さっさと終わらせてCDショップでも行こうかと考えながら、ため息漏らしながら校内に入って行った。
すると少し先に、フラフラ歩いている子がいる。あっち見、こっち見、とても危なっかしい。新入生かな…、ちょっと羨ましいかも、って思った。

あまりにもその挙動が面白いので、しばらく彼女を観察することにした。
よくもまあ、そんなにフラフラしているくせにコケずに進めるものだ、と感心していたら、ある一点を見つめてそのまま進んでいた。
そして、案の定コケた。何も無いところでそれは盛大に。不謹慎だが、思わず吹き出してしまった。
しかし彼女がなかなか起き上がらないので、慌てて駆け寄った。


「大丈夫ですか!?」


な、何とか…生きてます、と苦笑しながら言う彼女。
何て面白い答え方をするんだ、と思わず笑みがこぼれてしまう。こんなタイプ、初めて会った。
ふと何を見ていてコケたのかが気になり、聞くことにした。しかしずっと見ていたなんて言えない。


「どうしてこんなところで転んだんですか?」


私ちょっと、失礼だったかもしれない。

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