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□想定外
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よし、行こう。
お酒よし、おつまみよし。大丈夫。

今日はイサキの部屋に泊まろうと決めていた。1週間前から。だけど、本人には伝えていない。
イサキのことだから、言ったら何か準備しそうで、そういうのは嫌だった。それに、驚く顔と酔った姿が見たかったし、ちょっと良からぬ考えがないとも言い切れない。
断られる時のことは考えていないし、それは絶対無いと確信していた。イサキは私に甘いから。

学校から歩いて15分のこの場所にイサキは住んでいる誘導して本人に言わせた。
階段を上り、イサキの部屋の前まで来た。部屋の明かりはついている。良かった、まだ起きていた。
ドキドキするのをなんとか落ち着かせ、インターホンを押す。
ピンポーン、と私の気持ちを反映させたような弾む音が響く。イサキは出てきてくれるだろうか。
はい、と恐る恐る扉が開いた。もちろんチェーンはかかったままだ。そして私を見た瞬間、イサキは固まった。静に、扉がまた閉まった。
予想通りの反応と、予想外のイサキの行動に思わず私は慌てたが、チェーンを外すためだと分かり、安心した。


「一体どうしたの?」


一緒に飲もうよ、それから泊めてと伝えた。
色々と複雑な表情をしていたが、いいよ、と言って迎えてくれた。何だかんだ嬉しそうだったので、来て良かったと思う。
イサキの優しさに感謝しつつも、どうしても、すごく気になることがあった。

あのさ、どうしたらそんな風になるの?彼女の膝について聞いてしまった。
答えてはくれなかったが、とにかくどうぞ、と狭いけど。と言って部屋の中に案内してくれた。
顔が赤くなっている。顔、隠せてないよ?なんて考えつつ、やっぱりいきなり来て良かった、と心の中でほくそ笑む。

イサキの部屋は、想像していたよりも物がなかった。もっと、可愛いものとかがあるとばかり想像していた。
すごくシンプルで、必要最低限の物しかないような…。本当に普段を考えると想像できない。
でも、すごく居心地がいい感じの部屋。イサキみたいに。

イサキには悪いけど…やっぱり知りたいって思うのは、仕方の無いことだと思う。
私はもう一度問いかけた。ちゃんと、部屋の感想も忘れずに。


「こ、高校ジャージやから…。」

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