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□想定内
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しとしと、と外から音がする。今日はどうやら雨みたいだ。5月になったとはいえ、まだ雨が降ると寒い。
でもそのわりに今日は寒くないなあ、なんて薄ぼんやり考えていたら、私の体に手が回っているのにようやく気が付いた。
そこでようやく、私が昨日お酒の勢いで抱きついたことを思い出した。その名残でアヤの体にしっかりと私の手も回っている。
すごくすごく、やってしまった感があるけれど、別に悪いことはしていないので、気にしないことにする。
それにせっかくなので、しばらくアヤを観察することにした。普段恥ずかしくて、見ることなんてできないから。
アヤの睫毛、綺麗で長い…、というか化粧しなくても全然綺麗やなあ。
寝顔、可愛い…、と思ったところでだんだんまた眠たくなってきた。
うつらうつらしてきたところで、アヤが身じろぎをした。ん…なんて言いながら、私をさらにぎゅっとしてきた。
その勢いで、私はアヤの胸に顔を埋める形になってしまった。
せっけんのいいニオイと一緒に、アヤ自身のいいニオイがした。
それに、柔らかくて心地良い。
私は何かすごく満たされた感じがして、アヤにくっついて、すぐにまた眠りに落ちた。
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次に目が覚めた時、アヤと目が合って、にっこりして言われた。
「おはよ。よく寝れた?」
ん…、おはよ、と寝ぼけ眼で答えた。でも、正直まだ眠いかもしれない。
まだ寝てる?と聞かれたけれど、アヤはお客さんだ。
お客さんが起きているのに、私が寝ている訳にはいかないので、今何時?と聞いて体を起こす。
「10時前だよ。」
結構寝ていたみたいで、んー…なんて思わず唸ってしまう。