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□目論見
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「こっ、こんばんは…!」


てっきりイサキが出てくるものだと思っていて、まさかお姉さんが出てくるとは考えもしなかった。
私は動揺を隠せず、そのまま挨拶をする。
イサキのお姉さんはニッコリと笑い、こんばんは、どうぞ、と扉を開いて招き入れてくれる。

その時私は、お姉さんが私と同類であると確信した。
この人は何かを企んでいる。
“それ”が何なのかは分からない。けれど、気をつけることに越したことはないと思う。

中に入ると、いらっしゃい、と言ってイサキが髪をタオルで拭いていた。たった今、お風呂から上がってきたところらしい。ちょっと頬が赤らんでいて、可愛いのは言うまでもない。
お姉さんが出てきたのは、イサキがお風呂に入っていたための様だ。


「私、イサキの姉の榎本オオセと言います。妹がいつもお世話になっています。ありがとう。」


それでは、改めまして、と言ってお姉さんが名乗った。
それはそれは整った笑顔だった。


「宇崎アヤです。こちらこそ、イサキさんにはお世話になっています。」


私も負けじと笑顔で答える。
この時にどことなく緊張感が漂っていたは、気のせいではないと思う。


-


その後すぐに、イサキにまたお風呂場に押し込まれることになる。
入っている間に、ご飯を作ってくれるというので、私はお言葉に甘えてそのままシャワーを頂いた。
そこで私はシャワーを浴びながらオオセさんについて考えていた。

姉妹なので似ているとばかり思っていたが、二人は似ているようで、似ていない。オオセさんとイサキは外見が少し似ているが、雰囲気が全く違う。
イサキはふんわりとしていて、天然というか、マイナスイオンが出ていそうな雰囲気をまとっている。そして実際に見かけと中身が一致している。
だが、オオセさんはイサキに比べ、目元こそ似ているが、目の奥に怪しい光を宿している気がする。そして身にまとう雰囲気は、ふんわりとした清楚なお嬢様みたいで、笑顔を絶やさない。
しかし、見かけと中身は別モノなのではないかと思う。

この後がどうなるのか全く予想がつかないが、良くないイメージだけは付かないように気をつけよう。
そう考えがまとまったところで、風呂場を後にした。

ありがとうございました、とお風呂のお礼を二人に言う。その時にオオセさんの目が少し見開いていたが、特に気にすることはないだろうと思った。
部屋にはすでにご飯の用意ができていて、その出来栄えに目を奪われる。とても美味しそうなものばかりで、ほとんどがオオセさんの手作りなのだという。

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