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□ハント
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私達が思っていたよりも彼女は早く着いた様で、イサキがお風呂に入っている間にインターホンが鳴る。
仕方がないので私がはい、と言って扉を開けるとそこには、想像していたよりも背の低い女の子がいた。
完全にイサキが出てくると思っていたのだろう。とても動揺しているのが見て取れる。
それはまるで小動物のようにしか見えず、素直に可愛いと思った。
流石はイサキ。しっかりと押さえどころを押さえている。


「こんばんは。中へどうぞ。」


私の、できる限りの笑顔で彼女を中へ迎え入れた。その時に彼女の緊張がこちらまで伝わってくる。
すると丁度、お風呂から上がってきたイサキが姿を現し、彼女が安堵の表情を浮かべていた。むしろ緩んでいる。
確かにイサキは可愛い。だからそれは分かるのだが、気に食わない。


「私、イサキの姉の榎本オオセと言います。
妹がいつもお世話になっています。ありがとう。」


彼女の目をイサキから私に向けるため、自己紹介をする。
勿論、笑顔を張り付けて。

宇崎アヤです、と彼女も名乗ってくれる。
彼女は隠そうとしているのだろうけど、未だ緊張しているのがよく分かる。
そして、私に対して敵意を少々抱いているようだが、全く脅威に感じない。
どうしても、私には彼女が頑張って威嚇しているようにしか見えず、それにむしろ好感が持ててしまう。
ワザとではなく本気でそれをやっているため、余計に彼女の可愛さが惹き立つ。
私は彼女に対する考えを変えなければならないかもしれない。

恐らくイサキが彼女の気まずさを察したのだろう。彼女はイサキによってお風呂場に押し込まれた。
その間に私達は晩御飯を用意することになっている。メニューはイサキの好きなオムライスを中心にすることに決めている。


「イサキ、料理の腕は上がった?」


はっきり言ってイサキは料理が苦手だ。いつも料理をしなくて済むように最善を尽くしている。
一人暮らしになってもそれが変わっていないことを知っているので、あえて聞いた。
すると思った通りの反応で、分かってて言うんやもんなあ、なんてイサキはばつが悪そうな顔をしている。

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