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□目撃者
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『広いなあって思って見てたら、あの木の緑と花のオレンジと空の青さがなんというか…。
いい色合いやったんで、ぼーっと眺めていたら自分の足に引っかかりました。』


苦笑しながら答えてくれたが、やっぱりコケたのを見られたのが恥ずかしいらしく少し顔が赤い。
でも、声掛けてくれて良かったです、と彼女は言った。どうリアクションしようかと思ってました、と続ける。
そうか、それで動かなかったのか。これは、面白い。


「あの、今年入学の方ですよね…?私もなんですけど…。
もし良かったら、登録一緒に行きませんか?」


私はこう切り出す。
表情が明るくなり、はい!行きましょう!と、彼女が言う。


『私、3回生ですけど!』


どうやら彼女も私と同じ編入生らしい。こんな偶然ってあるんだな…。
それから入学式のダルさや、講義選ぶのって何か緊張しませんか、なんて初対面の人とする当たり障りの無いトークをしながら、思った。
コロコロ変わる彼女の表情。なんて豊かなんだろう。
それにさっきのコケた理由も…。この子はなんて可愛いくてしかも面白い。
これからの大学生活が楽しみで仕方ない。さっきまで嫌だったのが嘘のようである。

現金な私に自嘲しつつも、こんな子をGETした私に、盛大な拍手を送ってやりたい。


「私は宇崎アヤです。良ければこれからもよろしく。」


こちらこそよろしく、と榎本イサキは嬉しそうに言う。
私の中で、この子の属性は天然系という位置に納まった。
そしてしゃべりから察するに、関西圏の出身の様だ。



さて、これからどうしてやろうか。



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