No. 1〜30
□No.25
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海南戦が終わった後、私は泣く事なく皆を励まし、次は勝つことを誓い、女子ロッカールームにやってきた。
私は着替えずジャージのまま立ち上がった。
「彩ちゃん先に行ってるね」
「また?今度はどこに行くの?」
彩ちゃんが呆れて咎めることもしない。
「牧さんに会うの〜」
今度はちゃんと荷物をもって更衣室を出た。
海南控え室前で、選手が出てくるのを待つ。
知り合いがいないから、おもむろに突入できない。
「はぁ〜。誰かでてこないかなぁ」
ガチャ
あ、誰か出てきた。
「お、お疲れ様です」
私は頭を下げた。
誰だかわかんないけど、とりあえず挨拶した。
「……君は、湘北のマネージャー?」
あれ?と思い、顔をあげると海南監督もとい高頭先生が立っていた。
「あ、あの」
選手が出てくるものだと思っていた私は、言葉が出てこなかった。
「君は確か、……光月零さん、だったかな?」
「あ、はい!」
なんで、この人私の名前を知ってるんだろう。
「4年前、だったかな。全中で出場していただろう」
!
「君のプレイは凄かった。確か北海道だったはずだが、どうして神奈川に?」
「……病気で」
私は差し障り無いように答えた。
あくまでも敵の監督!
隙を見せちゃダメだ。
なぁんて、私は高頭先生に敵対視していた。
「そうか。それは災難だったな。もし、今もバスケを続けているなら……、いや、なんでもない」
なに?
高頭先生、なにを言おうとしたの?
「海南の選手に用があったのかい?」
高頭先生が笑顔で聞いてきた。
あ!そうだった!
「ま、まっ、牧さんに!」
私が吃りながら答えると笑われてしまった。
な、なんで笑うんだよ。
なんかムカツク。
「さっきまで敵対していた選手に会いに来たのかね?」
うっ。
「試合と個人の感情は別物なんです!」
私が言い訳すると、高頭先生が更に笑った。
「監督?」
笑い声を聞き付けて、牧さんがジャージ姿で更衣室から出てきた。
「牧さん!」
私の目の色が変わった。
「まぁ、ゆっくりしていきなさい」
高頭先生はそう言って、ロビーの方へと消えていった。
「あれ、君は確か、光月零?」
ふえぇ!
なんで名前知ってるの?
「な、なんで名前を?」
「ん?神の知り合いじゃないのか?」
へ?神くん?
神宗一郎?
じん そういちろう。
そういちろう。
そういち……。
あ〜!
「零!」
私の後ろから、聞き覚えのある声が聞こえた。
私は振り返った。
「彰!」
「よう、仙道」
牧さんが親しげに彰の名前を呼ぶ。
え?知り合い?
今日はもうダメだ。
私、驚いてばっかり。
し、心臓が口から出る。
「牧さん、オレの彼女盗らないでくださいよ」
……はぁ?
彰はヘラァっと笑って私の肩を抱く。
「そうなのか?」
牧さんが真剣に聞き返してくる。
「違います!いつから私は彰の彼女になったんだよ!」
私は彰の手を、肩から勢いよく引き剥がし、彰から離れた。
すると、神くんと清田が更衣室から出てきた。