No. 1〜30

□No.5
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「先輩はバスケ、プレイしないんですか」

なんつぅ質問を。

「プレイヤーだったんですよね。北海道で」

「!」

私は驚いて立ち止まってしまった。

流川も立ち止まり私の方を見た。

なんで知ってるの?

「先輩が中2の時、北海道で……」

「言わないで!」

流川の言葉を聞いていられなくて遮った。

流川は驚いた顔をしている。

あ、私……。

「ごめん流川」

私は俯いた。

知られたくない。

いつか言わなきゃいけない。

そう彩ちゃんは言っていた。

安西先生にも。

「……なんでプレイしないのか、聞いてもいいですか」

流川が聞きたいのは、よくわかる。

いつもシュート練習して別にプレイするわけでもなく、バスケを好きでいること。

言ってしまえば、気が楽になる気がした。

「……」





『可哀相に』

腫れ物を見るような目で、私を見ないで。





また、あの時の事を思い出した。

思い出してしまうと、何もかも無かったことにしてしまいたくなる。



「……言いたくないなら、いい」

黙り込んだ私に、流川は寂しそうに言った。

その表情がまた、私の胸を締め付けた。

「「……」」

黙ったまま、どちらかともなく歩きだす。

暫く歩くと私の家の近くまで来た。
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