No.31〜60

□No.36
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私と彰の周りの人が、ざわめいている。

「彰?」

私はどうすることもできず、彰の名前を呼んだ。

すると彰は、ゆっくりと深呼吸をしてから私から離れた。

彰と目が合った。

「零、聞いてくれる?」

彰の問いかけに、私は頷いた。

「オレ、零が好きだよ。昔も、今もずっと」

私の心臓が高鳴った。

彰の澄んだ瞳。

私がずっと追いかけてきた瞳。

私の好きな、瞳。

私は言いづらくて、俯いた。

「私も、彰が好きだ」

「零」

「幼なじみとして」

周りが静かになった。

私は決心して顔をあげ、彰を見直した。

「親友として」

私がそう言うと、彰はゆっくりと瞳を閉じ、笑った。

「オレもだよ」

彰のこの笑顔が、少し痛かった。

ごめんね、彰。

「ありがとう、彰」

ずっと私の事を思っていてくれて。



私も、できるだけの笑顔を彰に向けた。

「こちらこそ、ありがとう。零」

うん、大丈夫。

私も彰も。

「じゃ、行くね。安西先生のところに行かなくちゃ」

私は皆に手をふって、その場を離れた。

「光月っ」

魚住さんに呼ばれて振り返った。

「安西先生によろしくたのむ」

魚住さんが大きく手をふった。

「はぁいっ」

私もそれに答えるように、大きく手をふり、湘北の皆の元へと戻っていった。





「あ〜ぁ、フラれちゃった」

仙道はおもいきり、背伸びをした。

「仙道、なにも皆の前で告白しなくても……」

越野が少し顔を赤くしていった。

「今しかなかったんだよ。仕方ないだろ?」

仙道は緩く笑う。

「さぁて、選抜に向かって突っ走りますか」

仙道が歩き出す。

「もちろんっ」

越野を始め、福田や植草がそれに続いて歩き始める。



新しい陵南が、動き始めた。
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