仙道彰編

□Vol.02
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「ごめんなさい」

私は彰くんに謝った。

怒って、ムシして。

「ごめんなさい」

「謝っちゃ嫌だよ」

彰くんは首をふった。

「オレが誤解させるような事して、零が怒るのも当然なのに、逆ギレして、零のこと傷つけた」

彰くんは凄く悲しい顔をしていた。

とても後悔しているような。

「零、ごめん」

彰くんは頭を下げた。

そっか。

嘘ついたこと、彰くんも重荷になっていたんだ。

「顔、あげて?」

彰くんはゆっくりと頭をあげた。

その表情は、捨てられた子犬のようだった。

本当は彰くんも嘘、つきたくなかったんだよね。

なのに私は……。

「彰くん」

私はそんな彰くんの頬を撫でて、顔を近づけた。。

唇があたるのを確認して、私は瞳を閉じた。





触れるだけのキス。

それだけで、こんなにも君を愛おしく思う。

「零」

名前を呼ばれ、私は笑った。

「どうして、嘘ついたの?」

話してくれるでしょ?

彰くんは頷いた。

「あの子、昨日会ってた子は越野の事が好きらしいんだ」

……?

「越野に今、彼女がいないか聞かれた」

越野くん。

「それと、誰にも言わないで欲しいって」

そっか、彰くんはその子との約束を守ってたんだ。

だから私に嘘を。

「でも、結果として零に嘘ついてあの子と会ってたんだから、悪いのはオレだよな……」

「違う」

それは違うよ、彰くん。

「私が彰くんのこと信じてなかったから」

だから上辺だけで、その場の感情だけで、私、彰くんに。

「大嫌いなんて、酷いこと言った」

私のはやとちり。

「だからね、彰くん。大嫌いって言ってごめっ」

私がもう一度謝ろうとしたら、彰くんに抱きしめられてしまった。

「もう、謝りっこやめようか」

……。

私は、彰くんの胸に顔を埋めて頷いた。

「仲直り」

彰くんはそう言って私の背中を、ポンポンと叩いた。

私も彰くんの背中に手をまわし、背中を叩いた。

彰くんは大きくて暖かかった。





私の腹痛も薬でおさまり、貧血を起こすことなく午後の授業を受けることが出来た。



「今日、一緒に帰ろう」

放課後、部活に向かう彰くんが私に言った。

「でも」

今日も居残りとかしないのかな……。

「明日練習試合だからさ、今日は皆早く帰るんだ」

そっか。

なら、気を使わなくてもいいかな?

私は彰くんのお誘いに頷いた。

すると彰くんはニッコリと笑った。

いつもの笑顔だ。

「じゃ、また後でね」

彰くんが手をふって越野くんと体育館に向かっていった。
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