No.31〜60

□No.32
1ページ/9ページ

武里戦前日。





「花道、シュート練習頑張ってるね。」

花道は、朝200本・昼100本・練習後300本のゴール下シュートの練習を2日間続けてきた。

「はいっ」

「シュート練習、楽しいんでしょ?」

「はいっ」

あはは。

薄情なやつ。

「花道、ちょっと」

私は練習後のシュート練習に入る前の花道を呼び出した。

「なんですか?零さん」

「ファン1号は、花道君の活躍を期待しているぞぉ」

花道だけに聞こえるように囁いた。

「はい!頑張りますっ。見ててください!この天才桜木の活躍をっ」

可愛いヤツ。

頑張れよ。

私は花道の背中をバシバシ叩いた。

「私は帰るね」

「はい!お疲れさまです」

大きくてをふって、花道と別れた。

帰ったら歌の練習だ。

その前に、激励の電話を。

私は携帯の通話ボタンを押した。

コール音が鳴り響く。

出ないなぁ。



『もしもしっ、零!?』

どうしたんだろ。

息なんか切らして。

「彰、今大丈夫?」

電話の相手は彰。

明日、海南と戦う陵南の仙道彰。

『全然おっけぇ』

本当かなぁ。

「明日の海南戦、彰がポイントガードやるの?」

『……確信からついてきたね。“頑張ってね”って言われるのかと思ったのに』

「それは最後に言ってあげる」

『あはは!まぁ、あたってるって言っとくよ』

やっぱりね。

『流石、零』

「何年、一緒にバスケしたと思ってんのよ」

『ろっくね〜ん』

「よろしい。だからひとつアドバイス」

『なに?』

「自分でも点を取りに行かないと、喰われるよ」

『……』

彰からの返事は、なかった。

「海南は強い。牧さんのガード力は半端ない」

『……知ってるよ』

「でも、彰も負けてない」

『零?』

「彰、絶対に海南に勝ってね」

『……』

彰が電話越しに笑っている。

「なんだよっ」

『零、可愛いすぎっ』

「はぁ?」

なんで今のが可愛いんだよっ。

『はぁ〜。やっぱ、好きな子からの応援は、燃え上がるね』

「なっ、なんだよ。私はただ……」

『ありがとう、零』

「……うん」

『零と話せて良かったよ』

「私は、警告を」

『それでも、嬉しい』

……彰。

『明日、勝つよ』

「うん。頑張って」

『仙道!』

電話越しに、魚住さんの怒鳴り声が聞こえてきた。

『ごめん、これからミーティングなんだ。じゃ』

そう言って、電話は切られた。

まったくもぅ。

でも、彰らしいや。

私はクスリと笑って、携帯を閉じた。



私はただ、彰の負けた姿を見たくないだけなんだ。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ