No.31〜60

□No.33
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私は陵南控え室の前で立ち塞がっていた。

ここまで来たのは良いものの、中に入る勇気がない。

どうしようか考えていると、控え室のドアが空いた。

「あ、光月さんっ」

ドアを開けたのは彦一だった。

「あのっ、お疲れ」

私は俯きがちに言った。

なんで私が泣きそうになってんだか。

「零?」

すると彰がジャージ姿で出てきた。

「零ちゃん、きてくれたんだ」

コッシィも控え室から出てきた。

「お疲れさまです」

私は頭を下げた。

「零、ごめん」

彰が私に謝った。

「えっ?」

私は顔をあげて彰を見た。

「勝つって約束したのに果たせなくて」

彰はヘラァと笑った。

なんで、なんで笑ってるのよ。

私は悔しいよ。

涙が、溢れて、止まらない。

「零!?」

彰が慌てている。

「なんで零ちゃんが泣くの?」

コッシィもかなり慌てている。

「だって悔しいんだもん」

私が手で顔を覆うと、彰に頭を撫でられた。

「零は違うチームだろ?」

そうだけど。

「彰が負けるのは、悔しい」

私がそう言って、彰に抱きついた。

彰は私を受け止めてくれた。

彰の胸の中でしきりに泣いた。

う〜。

涙が止まんない。

「あぁ、零。そんなに泣くなよ。オレが泣かせたみたいになる」

ふんだ。

「彰が泣かせたんじゃん」

「えぇっ」

彰が参ったな、と溜め息をついた。

「仙道、女の子を泣かせるなよ」

コッシィの声が聞こえた。

「……要チェックや」

「相田っ!」



バタン

彦一の声のあとに、コッシィが彦一を咎めるような声がして、ドアが閉まった。

「……気を遣わせちゃった」

彰が呟く。

私は無遠慮に彰の背中に手をまわし、彰のジャージをしっかり掴んだ。
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