No.31〜60

□No.34
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目覚めたのは朝。





昨日の事を思い出すと、吐き気がした。



左手首が重たい。

よく見ると、赤黒く線が入っていた。

床には少し血溜まりができている。

私はなにも考えることなく、片付けをして左手に湘北カラーのリストバンドを付けた。

それを隠すように。





「湘北と、彰」

私は、自分に答えが出せないまま、試合会場へ向かった。





会場へ向かう途中で、流川に会った。

流川を見ても、私は挨拶をすることはなかった。

「……はよっす」

初めて、流川から挨拶してきた。

「はよ」

私は、一応答えた。

「どうしたんすか」

流川が聞いてくる。

うざったい。

私は流川を無視して歩き続ける。

「勝ちますから」

思いがけない言葉に、私は流川を見た。

「先輩がどんな思いでも」

そう言って流川は行ってしまった。

胸が、苦しくなった。





湘北が勝てば全国。

彰が、陵南が勝てば湘北はベスト4。

そりゃぁ、湘北に勝って欲しい。

『同情ですか?』

昨日の花道の言葉が蘇る。

同情なんかしてねぇ。

今まで一緒に戦ってきて、どこをどう同情するんだよ。

湘北メンバーの努力を一番わかっているつもりだ。

勝ちたい。

そう思ってずっと練習してきたんだ。

ただ、彰の負けた姿を見たくない。

陵南対海南戦を見て、強くそう思った。

私の中で絶対的な存在の彰が、負けるなんて考えられない。

彰はいつも1番だった。




……わからない。

どちらを応援していいかなんてわからない。

できれば、どちらにも勝って欲しい。

だけど今日は試合。

勝敗が決まる。

私は、なんなんだ。

どちらかを選べない私は、最低、だよね。





「光月」

気が付くと会場の湘北控え室にいた。

私、どうやってここまで来たんだろう。

思い出せない。

「光月」

赤木先輩に名前を呼ばれて、私は赤木先輩を見上げた。
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