No. 1〜30

□No.17
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「……」


彰は、ただ私を見つめているだけだった。

「生きる気力も無くなった私を、助けてくれたのが彩ちゃんだったんだ」

私は少し苦いコーヒーを飲みほした。

「ホント、いつも、いつまでたっても、助けられてばっかり」

彰は、強い。

バスケもそうだけど、頂点に立ち向かっていく強さがある。

そんな彰がうらやましい。

それに対して私は……。

「私、弱くて嫌いだな」

「零は弱くない」

彰の力強い声に、私はハッとした。

「手術と向き合ったんでしょ?」

「それは、安西先生が……」

「リハビリも頑張ったんでしょ?」

「励ましてくれた人がいたから……」

お父さんとお母さんは、いつも私を応援してくれた。

「おじさんとおばさんがいなくなっても、リハビリ続けて」

「それだって、花道達がいてくれたから……」

「今だってバスケ部のマネージャーやってるし」

「それも、彩ちゃんがいなかったら私……」

「でも、最後にこうしたいって決めたのは、零だろ?」

彰の瞳はいつも力強い。
彰から目が離せない。

「そうやって前に進んできた零は、強いんだよ」

「でも」

「助けられてばっかりだって言ってるけど、そんなの当たり前でしょ?」

助けられる事が当たり前なの?

助けられるのは私が弱いから。

「一人じゃ生きられないんだよ人間は。バスケと同じ」

「バスケと、同じ?」

「ん〜、練習は確かに一人でできるかもしれないけどさ、ゲームは一人じゃできないでしょ」

一人でバスケやっても楽しくない。

一人じゃゲームが出来ない。

それはわかる。

「ガードかいてフォワードがいてセンターがいて。互いが互いをフォローしながらも、自分で決めたシュートコースを打つでしょ?」

……彰の言いたいこと、わかった気がする。

「だからさ、助けられることが弱いことじゃないんだよ」

そう、なんだ。

私、弱くないんだ。

彰の言葉が胸の奥で響いてる。

「彰は凄いね」

彰には一生敵わない。

そう?と彰はミルクティーを飲みほした。

「ゲームメイクも、私を奮い立たせるのも、ウマすぎ」

「それはどーも」

私達はやっと、笑い合うことができた。
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