No. 1〜30

□No.18
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無我夢中で走って家に帰った私は、いつの間にか寝てしまっていた。
起きると日が登ったあとだった。

そういえば私、結構走ったけど発作が起きなかったなぁ。

……げっ。

「ち〜こ〜く〜っ!」

時計を見ると午前7時。

今日からインターハイ県大会が始まる。

8時に開会式が行われる会場集合しなくちゃいけない。

「うにゃー」

私は叫びながら身支度を済ませ、家を飛び出した。

すると、流川が自転車をこいでいる姿を発見した。

「流川!」

私が流川の名前を呼ぶと、流川はキィと音をたてて止まった。

「乗せてけ、急げ、飛ばせ!」

「ウス」

私は勝手に流川の自転車の後輪に足をかけ飛び乗り、流川を促した。

大会に向かう流川はジャージ。

私は制服。

ちょっと変な光景だなぁ。

「……流川!」

よく見ると流川の頭が上がったり下がったりしている。

コイツ居眠り運転してるよ!





流川を寝かせないように、私が一方的に喋りまくっていたら、いつの間にか会場の近くまで来ていた。

腕時計を見ると、7時40分。

「間に合った。あっ」

私は見覚えのある、黒ジャージに手をふった。

「魚住さ〜ん!」

「むっ」

魚住さんを呼んだのに流川が反応した。

綾南が会場に向かって歩いているところだった。

「あっ。零〜」

だから、私は魚住さんを呼んだんだってば!

彰が反応するな!

「魚住さん、おはよ〜ございま〜す!でわまた後で〜」

あくまでも魚住さんに話しかける私。
しかし、流川がスピードをあげたため、それだけしか言えずに綾南を通りすぎた。

「ちょっと流川!きゃあ!」

流川が急にブレーキをかけたので、私は流川にしがみついた。

「ビックリした」

「おはよう。流川、と零」

バランスを崩した私が必死で流川にしがみついていると、彩ちゃんの声が聞こえた。

「彩ちゃん!」

「零さん、なんでルカワに抱きついているんですか!」

花道の声も聞こえてきた。

「抱きついて、……いるけど、これは流川が急にブレーキをかけたから、バランス崩して!」

私は慌てて流川から離れ、自転車を降りた。

すると目を瞑っているミッチーが私の視界に入った。

あっ……。

昨日のこと謝らなくちゃ。

「ミッチー、あのっ」

「スカートの下に短パンはないだろう……」

ミッチーが私と目をそらしながら、言った。

「み、み、み、見たわね!」

私は思わずスカートを押さえた。

「チャリから降りるときにな」

この人は!

「ミッチーのスケベっ!」

私はミッチーに背を向け、彩ちゃんへ寄り添った。
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