No. 1〜30

□No.19
1ページ/8ページ

翔陽戦当日。



私は早起きした。

唇がまだ熱い。

私は、ミッチーのことで頭が一杯すぎた。



今は湘北にとっても、ミッチーにとっても、県大会が終わるまでは大切な時期だ。

バスケの事だけ考えようと、朝早くから、いつもの屋外コートに向かった。





シュッ

……スパン

「よし!」

私は何本も、何本もスリーポイントシュートを決め、疲れたので、休憩していた。

キィ。

いつもの、鉄の擦れる音がした。

「……ウス」

流川がボールを抱えてコートに入ってきた。

「おはよう。早いね」

私は、今日も流川の自転車に乗せてもらおうかと考えながら、流川に挨拶をした。

流川が私をじっと見つめてきたので、私は笑った。

「ごめん。今、休憩中」

私の言葉の意味を察した流川は、一人で練習を始めた。



……いいなぁ。

私もプレイヤーとして、活躍したい。

私の叶わぬ願いは、虚しく空に吸い込まれた。





「早いなおまえら」

「ミッチー!」

流川のプレイにみいっていた私は予想外の人物の登場に驚いた。

あ、やばい昨日の事を思い出しちゃった。

「あ、あのっ、あっ、るっ、流川!相手してやる!」

私はミッチーから逃げるように、流川の元へ走った。



「……わかりやすい奴だな」

昨日の事がばれてしまうのも時間の問題かと心配する三井であった。



朝練習を満足にやり終えた流川が自転車に乗った。

「流川!今日もお願いね」

私は、なんの戸惑いもなく、自転車に足をかけて流川の後ろに立った。

「おい。二人乗りか?」

「ミッチーも早く行かないと遅刻するよ!」

私はミッチーの疑問を無視して、ミッチーを急かした。

「……あのなぁ」

「さぁ!流川号、走れ!」

「ウス」

私のかけ声とともに流川が自転車をこぎだす。

「じゃ。ミッチー後でね!」

昨日の事をなんとか心の中にしまった私はミッチーに手をふった。

そう、今は試合に集中しなくちゃ。

ミッチーの気持ちは物凄く待ち遠しいけど、今は試合!

私は自分自身に渇をいれた。





「あいつは、昨日した事本当にわかってんのか?」

一人取り残された三井は、今朝会ったときとは逆の気持ちに襲われ、溜め息をつきながら試合会場へ向かった。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ