No. 1〜30
□No.20
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翔陽戦後半開始
花道がさっき晴子ちゃんにべた褒めされて、調子が上がり、絶好調だった。
花道のリバウンドが決まり始めると、湘北も並みに乗り、9点あった点差を、あっという間に1点差まで追い詰めた。
残り14分。
花道のリバウンド、リョータの速攻パス、流川のダンクで湘北は逆転した。
36対35
湘北1点リード。
すると、今までベンチにどっしりと座っていた、藤真さんが立ち上がった。
「きたぁ!」
私は翔陽ベンチを見て叫んだ。
「何をそんなに元気になってるの?さっきまで萎(しお)れてたくせに」
彩ちゃんは痛いところをグサグサと刺してくるなぁ。
「いいじゃん別に!県内トップクラスのガードのプレイを見たかったんだよ」
私はふてくされながら、スコアボードに書き込みを続ける。
「それも良いけど、湘北の応援もしなさいよ?」
「もっちろん!」
「メンバーチェンジ!」
審判の声とともに藤真さんがコートにでた。
すると藤真コールが凄いのなんのって。
湘北の応援もそうだけど、私は暫く藤真さんのプレイを見ることにした。
コートにでた瞬間の藤真さんの目が別人に変わらなきゃ、そこまで私が藤真さんに注目する事はなかった。
藤真さんがコートに入ってすぐ、藤真さんに、翔陽に点を取られてしまった。
「なめらかだぁ。しかもサウスポー。……カッコいい」
私は、小さく歓声をあげる。
湘北オフェンス。
赤木先輩のブロックされたボールを花道がリバウンドで取るが、下で待っていた藤真さんにボールを奪われ速攻を許した。
でも早さじゃ湘北も負けてない。
リョータが藤真さんに追い付いた。
「藤真178。リョータ168。これくらいの差ならリョータは止めるわよ!」
彩ちゃんがリョータに叫ぶ。
私、158。
ぅわぁ。
10センチずつ違う!
そう呑気に思いながら、藤真さんがシュートを放つのを見た。
「早っ!」
藤真さんはジャンプの最高点に達する前にボールを放った。
と思っていたのもつかの間、花道が藤真さんの後ろからブロックしようと高めにジャンプしていたので、藤真さんとリョータを巻き添えに、倒れ込んだ。
「……」
「あの子は」
彩ちゃんがやれやれと頭をふる。
「彩ちゃん」
「なぁに?」
私は、凄い奴から目が離せないでいた。
「アイツ凄い」
「藤真ね。そりゃぁ……」
「違うよ彩ちゃん」
私は彩ちゃんの言葉を遮った。
「え?違うの?」
私はそれ以上話さなかった。
話せなかった。
今起こったことを、頭の中で綺麗に整理する必要があったから。
コートでは花道が先ほどインテンションファウルを受けたため、藤真さんのフリースローが放たれていた。