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□2009X'mas
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桜木花道バージョン





世間ではクリスマスが騒がれる中、私の彼氏は自分の身体と毎日戦っていた。

「は〜なみ〜ちく〜ん」

私は海岸沿いにあるリハビリステーションを訪れた。

「あ、お久しぶりです!」

リハビリに取り組んでいた彼は、ギラギラした眼差しからほわわんとした可愛らしい笑顔に変わった。

このギャップが堪らなく好きなんだぁ、私。



彼とロビーの椅子に二人で座った。

私はドキドキしていた。

付き合って初めてのクリスマスイブ。

私は彼へと、プレゼントを用意してきた。

渡すのは今しかない!

「あのね花道君」

「なんすか?」

彼の真っすぐな瞳が、私に向けられる。

ドキッとした私は本来の目的を忘れそうになったが、やっとの思いでプレゼントを取り出した。

「これ、クリスマスプレゼント」

赤い包装に黒リボンの包み、湘北カラーのクリスマスプレゼントを彼に渡した。

それを受け取った彼の顔が真っ赤になっていくのが見ていてわかった。

「ありが、とう、ございます」

うぷぷ。

可愛いなぁ、花道君は。

「あ、オレ、なんも用意してないです」

彼があたふたと、困りはじめた。

「いいよぅ。花道君がまた元気にバスケしてくれれば、それが私へのクリスマスプレゼントにして?」

そう言うと、更に彼の顔が赤くなった。

本当、好きだなぁ。

私がそう思っていると、彼がジャージポケットの中に手を突っ込んでなにかを取り出した。



差し出された大きな掌には、いちごミルク味の飴が一つ、ちんまりと乗っていた。

「あのっ、今はこれしかないですけど……」

受け取ってくれますか、と言った彼の声は小さくなっていった。

私はクスリと笑い、彼の大きな掌から飴を受け取った。

「ありがとう。大事にいただきます」

私はいちごミルクの飴を頬張った。

「美味しい」

「雪だ」

美味しい、雪?

彼が窓を指差していたので、私はその先を目線で追った。

「雪?」

私がしっかり確認する前に彼に手をひかれて、肌寒いラウンジに出た。

「わぁ、雪だぁ」

外は波の音と共に、雪が舞っていた。

「ホワイトクリスマスだね」

私がそう言うと、彼は辺りをキョロキョロと見渡した。

「花道君?」

私が彼の名前を呼ぶと、彼は戸惑いがちに私に顔を近づけた。

唇が触れるだけの優しいキス。

肌寒い身体が一気に熱くなった気がした。

顔が離れると、彼はそっぽを向いてしまった。

寒いのか照れているのか、後から見る彼の耳は髪の毛と同じくらい真っ赤だった。

「イチゴアジ」

彼はそう言って、私の手を強く握った。



ファーストキスの味は、

イチゴアジでした。
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