仙道彰編

□Vol.03
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店員は私の目の前に、フルーツの沢山のったタルトを置いた。

「ごゆっくりどうぞ」

店員はすぐにいなくなってしまった。

「私、頼んでない」

私は店員を呼び戻そうと、店員さんを探した。

「いいんだよ」

藤真さんがニッコリ笑って言った。

「オレから君へ」

は?

「今日付き合ってくれたお礼」

……そんなの、別にいいのに。

可愛いお店、見つけられただけで十分。

「あと、デートみたいで楽しかったからね」

……デートじゃないです。

「折角だから、食べて?」

私は藤真さんの言われた通りに、ケーキにフォークをおとした。

……美味しい。

彰くん、甘いもの好きだって言ってたっけ。

今度、一緒に来ようかな。

……姉貴も好きそうだな。

教えといてあげよう。

「この間の青い本、どうだったか聞いてもいいかな?」

……あぁ。

藤真さんに取ってもらった青い本。

「ミステリーでした」

私は内容を思い出しながら話した。

「恋人が誤認逮捕されてしまって」

探偵は必死で愛しい人の無実をはらすために、街中をボロボロになるまで駆け回って、真犯人に結び付く証拠を見つけだす。

「ラブロマンミステリーでした」

「ふぅん?」

ふに落ちない生返事。

「本が青いのはなぜだろう。内容と関係あると思ったんだけどな」

藤真さんがゆっくりとコーヒーカップに口をつけた。

「綺麗な青だったから……」

藤真さんは頬杖をついて、コーヒーカップを眺めていた。

……俯いたらわかる。

まつげ長い。

本当にお人形さんみたい。

私はケーキをほうばってから話しはじめた。

「名前です」

「名前?」

藤真さんが、聞き返した。

「ヒロインの名前が、Sapphire(サファイア)って言うんです」

だから真っ青な本。

「Sapphireという宝石を求めあうような物語でした」

「壮大だね」

藤真さんが柔らかく笑った。

「オレも読んでみたいな」

……藤真さんって謎だ。

私はそう思った。

バスケ部で、本が好きで、アンティークに興味があって。

趣味範囲広い。

「オレ、多趣味なんだ」



また、読まれた。

怖いなぁ、藤真さん。

「ところでさぁ」

そう言って藤真さんは、一枚の紙切れを私に差し出した。

……なんだろう?
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