仙道彰編
□Vol.05
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私はギュッと手を握りしめて、会場をでた。
彰くんが落ち込んでいるのに、私はなにもしてあげられないの?
私、頼りないのかな?
だから彰くんは私を頼ってくれないのかな?
考え事をしながらフラフラと歩く。
電車にも乗らず、ひと駅歩いてしまった。
モヤモヤは消えないまま。
陵南が負けたのは、悔しいし悲しい。
彰くんもきっと、悔しくて悲しい。
1人で抱え込んだりしないよね?
大丈夫!私がいなくても、バスケ部の皆が……。
私なんかいなくても……。
どうしよう、急に泣けてきた。
彰くんが私を頼ってくれなかった事が悲しい。
私は彰くんの力になりたいのに。
私じゃだめなんだ。
感情を制御出来なくなり、勢いに任せて涙が溢れてきた。
何度拭っても涙は止まらず、私には止める術がない。
やだ、こんな公園の真ん中で。
なにやってんだろう。
泣くのを必死で押さえようとするほどに涙が溢れて止まらない。
困った。
「なにしてる」
!
聞き覚えのある声に私はビクリと肩を震わせた。
人に涙を見られたくない。
その一心で涙を拭い、私は声のする方へ振り返った。
「流、川くん」
声の主は流川くんだった。
「……泣いてる」
自転車にまたがっていたルカワクンが、自転車を置き私の前に立った。
なにを言ってるの、涙は完璧に拭いた。
「泣いてない」
私は流川くんを睨みつけた。
「ウソ」
そう言った流川くんの右手がそっと私の頬をなぞった。
「泣いてる」
私の意志とは関係なく、涙が溢れていた。
見られたくなかったのに、もう止まらない。
「泣いてなんかっ」
とにかく流川くんから離れようと私は背を向けた。
「待て」
腕を掴まれ、進めない。
ど、どうしよう。
「そんなに、……陵南が負けたのが悔しいか」
手を離されたと思ったら、流川くんにそう聞かれた。
私は頷いた。
「泣くぐらい?」
その質問には首を振った。
今の私は負けた事より、仙道くんに頼られないことが辛い。
頷くと流川くんに頭を撫でられた。
「そうか」
私は流川くんの手を振り払った。
慰めならいらない。
「見ないで」
それに、泣いてる姿なんて見られたくない。
「……わかった」
よかった、わかってくれた。
私は流川くんから離れようと足を動かした。