仙道彰編

□Vol.05
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もし、彰くんが根をあげたときは私が受け止める。

「……うん」

頷いてから気づいた。

でも今のってなんだか、流川くんが落ち込んだ時にって感じの言い方だったような……。

ん〜と、ま、いっか。

「ありがとう、流川くん」

泣いてスッキリしたし、少し元気がでたよ。

「どあほう」

どっ、どあほう?

いきなりなに?

私の腕を掴む流川くんの力が少し強くなった。

「……仙道に勝ったらオレと」

「零だ!」
「光月!」

この声は。

「藤真さん」

と、

「牧さん」

振り返れば2人が駆け寄ってきた。

なぜここにいるの?

藤真さん達が来るのと同時に、流川くんの手が私から離れた。

「なんだー流川ぁ。人の彼女に手ぇだしてたのか?」

藤真さんがニヤニヤと流川くんを小突いた。

「ちげーっす」

流川くんが嫌そうに藤真さんから離れていった。

えっとー、この状況なに?

「光月、オレを見ていてくれたか?」

牧さんが私に聞いてきた。

「え、えと」

対海南戦だったから確かに牧さんも見ていたけど、私の視界はほぼ彰くんだったから……。

「こい」

「 ! 」

私が返答に戸惑っていると、流川くんに手を引かれ自転車に乗るように促された。

「「待てっ」」

慌てる2人の声が聞こえる。

「流川くん?」

「アイツに心配されたくねーなら乗れ」

アイツって、彰くん?

私はそう考えると、直ぐに自転車の荷台にまたがった。

今日は制服じゃなくてジーパンでよかった。

流川くんも自転車に跨がり、勢いよく自転車を発進させる。

私は振り落とされないように、流川くんの背中にしがみついた。

「零っ、またデートしよう」

「光月、今度バスケを教えてやる」

私がなにも言えずとりあえず一礼すると、更にスピードがあがり2人から離れていった。

……。

大きくて暖かい流川くんの背中が私を落ち着かせてくれている。

ダメだと分かっていても、このまましがみついていたいという気持ちに負けてギュッと流川くんのジャージを握りしめていた。

少しだけ。

彰くんを思いながら。
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