Novel


□一瞥くらいがちょうどいい
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一瞥ぐらいなら、
二人の言葉のキャッチボールは成り立っているように見えただろうに。

深く見つめない事は正解なんだ。




本当は…、







成立なんてしていないから






ペーターはボールを雨のようにを投げつけるだけ


それもたいして重量のない空虚なボールを

今はまだ






勿論アリスは防いでる


大切なハートを少しでも守りたくて

満たされたくなどないのだと
頑なに


それでもたまに掠めていかれ


知らず知らず絆されてゆくこと少々






その内
防いでばかりのアリスに


僕に応えてくれと


『応えなど必要ない』と自ら言った筈のペーターが


ボールを返して貰えたら、と

なんとも儚いものを求めてしまう






渋りながらもアリスは返してみようという気になった


足元に積もっている山の中からボールを拾う



握ったボールは案外柔らかく

とても軽い


届くようにと願いこめて投げつける







けれど
何度やろうが結果は変わらない


両手で包み込む形で受け取られれば

ボールは解き放たれたように霧散する


投げるボールも受け取るボールも


ペーター・ホワイトの掌に残るは、

ただ空虚のみ






アリスの言葉は確かに届いているが

届いていない


今はまだ







それでもペーターは満足げに口角を上げ


そして再びアリスに求めようと


ボールを掴む。








求めることを望む白兎の果てとは一体何処なのか


End.

091106.


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