Novel


□芽生える気持ち
2ページ/6ページ








ツカ………………ツカ………………ツカ………………・・・・・・







ツカ……………ツカ……………ツカ……………・・・・・







ツカ…………ツカ…………ツカ…………・・・・


聞きなれた足音が私の自室に届く。

私は顔をあげ、視線を音が聞こえてくる廊下側の壁へと向けた。

どうやら歩幅が広く長い足の持ち主が歩いているらしい。

まだずっと遠くなのか足音はとても微かなものだ。

それでも彼の足音ならすぐわかる。
勿論、彼みたいに長くて性能のいい耳を私はもっていないのだけれど。





この音が聞こえてくる度にいつも思うことがある。
足音にも性格ってでるものなのか、と。
だから、三時間帯前に休憩時間なんだとエリオットの部屋へわざわざ私を訪ねてくる双子に聞いてみた。

すると、


『それはあのひよこウサギだけだよ』

『そうそう、あのマヌケなひよこウサギだけだよ。僕らはそんなマヌケなことしないよ』


ベタベタベタ。
いつも通り、私の腕やら腰やらに抱きつく過剰なスキンシップをとり入れながら答えてくれた。


『そうなの?』


そう言えば、この双子の足音ってどんなだっったけ。
聞き覚えがないわ。


『まぁ、仕事中は普通に足音消してるけどさ』

『屋敷内だと気が抜けるんだろうね…お姉さんがいるし』

『ああ、そういうことか…!! ってことはチャンスだよ兄弟』

『チャンスだね兄弟。うん、早速準備しよう』

『ちょっと、』


頷き合う彼らは、素早く密着させていた身体を離し。
「楽しみにしててね、お姉さん♪」と、私へ楽しそうな声を残しディーとダムは部屋の外へ駆けて行った。

忙しい子達。


――つまり、双子曰く彼ぐらいらしい。
あんなにわかりやすい足音を出してる奴は。


「あ、やっと見つけた」


目当ての裁縫箱を机の上に置く。
何処に置いたのかと迷わないように。

すぐにエリオットの部屋へ戻りたい。

でも、流石にこの状態を放置したまま戻れない。
なかなか見つからなかったせいで床にはいろんな道具が散乱している。

使用人さん達に迷惑かかるし。
何より、片づけられない女だなんて1mmだって思われたくない。

ちゃんと片付けないと、これ…。

しゃがみ込んで溜息をひとつ。
私はちらばる道具を引き出しへ片付けてゆく。
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ