Novel


□切れない赤に絡みカラマレ
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きっかけは何だったか


嗚呼、なんでこんな話をボリスにしちゃったんだろう。





〜〜事の発端は12時間帯ほど前〜〜


『……ねぇ、そのあんたの言う小指に結ばれてるっていう糸さ、これよりもいいもんなの?』


一体何処から出したんだか。
久しぶりに目にした、金色に輝く眩い手錠。

ボリスは隣でカチャカチャとそれを人差し指にひっかけ回している。


『いいものっていうか…、んー。運命の赤い糸は言い伝えだから信じる人次第ね』


私も幼い時は信じてた。

この小指の先に繋がる相手はどんな人だろうかと。
赤い糸をこの目に映していた。
まぁ、歳を重ねるとともに目は覚めてしまったけれど。


『見えないんだろ?手錠のが断然いいって。拘束力にしたってさー、抜群だし』


なんだか腑に落ちないという表情をつくって聞いているボリス。
彼の話の落ち着くところは結局、効力がどうのとかいうとこらしい。


『はいはい、手錠は拘束具なんだから抜群でしょうよ』

『だよな、すげえ抜群! それにかっこいいぜ〜』


あ…、まずっ。

隣でボリスの瞳には再びキラキラが舞い戻りつつある。
このままだと本日2度目の、自分の趣味にまっしぐらをしてくれそう。

拘束具なんてワード出すんじゃなかった。
これだけ敏感に反応するなんて、本当に流石だとしか言えない。

延々と趣味について語られ続けるのはもうごめんよ。


『確かに見えないけど、決して切れないらしいって聞いたわ』


どっかに飛んでいるボリスを引き戻す為、切れないという部分を強調してやや強引に話を戻す。


『〜〜ん?なになに、もしかしてアリスも信じてんの?』


ボリスは頭を軽く振って戻ってくれた。

よし、成功。
ちゃんと届いたみたい。


『…………別に。私は別に信じてなんかないけど』

『――ふうん、そうなの?』


ボリスがニヤニヤ顔で私の耳元へ擦り寄り、そう囁いてくる。
本当はどうなの? とばかりに。

もう信じていなかった筈だけど。
間が空いたってことは今も信じてるのか、私。


『そっか。まあ確かにアレ切れないし、手錠ほどではなさそーだけどあんたとやってみるのも…っと』


言うなりボリスは密着させてた身体を離し、ソファからすくっと立ち上がる。
それに連鎖して私の腕からもふさふさとした手触りが良い襟巻が離れていく。


『え、なにか用事があったの?』

『いいや、ちょっとこれから探しモン。とにかく俺にまかせとけっ☆』


え?
何をまかしとけなの。

「なるべく早く戻るからさ、遊園地からは絶対に出るなよ?」という一声を残し、ボリスは何やらうきうきと私の部屋を飛び出していった。

用事があったならあったで、もっと早く言ってくれればよかったのに……。






傍にいてくれた温かな温もりは、いつでもべったりだったので離れてゆくのは久しぶり。
置いて行かれて寂しいかもと、感傷に浸りだしてしまった私にはこの時ばっちりと感じていただろう嫌な予感に気付けずじまい。







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091114.

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