Novel


□切れない赤に絡みカラマレ
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寂しく思えば運のつき


『ほらっ、アリス』


一応頑張ってはみたけれど、嫌とか拒否する言葉を私は言いだせず。
それどころか、『まぁ手錠よりはマシかな』などと甘い考えに至る始末で。

お互いの小指へちょうちょ結びで結びあった。

あんなに嬉しそうに輝かせた表情、そしてあのついつい握りしめたいという衝動へ私を魅する尻尾っ……尻尾を…。
…っ、もうダメ。
思い返すだけでも無理。

本当に猫なのよね?って、疑いたいぐらい激しくブンブンと振ってせがまれたら…ねぇ?
わかるでしょ?
……というかわかって?


結局、私にだってボリスを止めるのは無理なのよ。





〜〜4時間帯ほど前〜〜


――――休園日の遊園地。


これから始めるぞ〜〜!!
といった前もっての予告など滅多にない、毎回気分で始めだす滞在先の家主による迷惑きまわりない騒音騒ぎ。

いまだボリスは帰って来なく、仕方なくお休みをとっていて普段よりも少ないたったの3人という従業員達と結束して事に当たったのだが……。
なんとか潰すことに成功。
人数なんて関係ない、これはもう気合いだ慣れだと判明した。


その後、私の仕事も終わり。


これからすることもない無駄な時間をどう使おうかと、園内をぷらぷら悩みながら歩いてた。

他の領地に遊びに行きたくても、ボリスが居ない間になんて後が怖くて抜け出せない。

そうこうしていると、ボリスの呼び声が聞こえたような気がして後ろを振り向いたら。
彼はまだ遠くにいて、何やら赤い毛糸玉のようなものを右手で振り回し、わたし目がけて駆けきた。



『これさ、拘束力は弱めなんだけど。あんたの話し聞いてたら使ってみたくなったんだよね』


ボリスが振り回していたブツは糸端が左右から2本飛び出している、赤い糸玉。

触った感触は硬くなどなくむしろ柔らかい感じで、ごくごく普通の糸っぽい。
でもボリスから聞いた説明は本当で、この糸も一応拘束具の部類に属してる。

糸を引っぱれば糸玉に戻ってゆくし、結び会っていようが糸玉から糸は出てくのでいくらだって離れることができてしまう。
それに絶対に切れないというオプション付きだ。
まさに運命の赤い糸を具現化させてるようなんだけど。

私が聞いかぎりでは、どうやら"かなり自由度高めなおもちゃ"らしい。


軽い気持ちで結びあっていい普通の糸なんかじゃなかったの。





〜〜そして現在〜〜


……糸玉、私に持たせてもらってて本当によかったわ。
ボリスに持たせたままでいたら私もきっと、こんな目に。

私の小指から垂れ下がる赤い糸に絡まって、ズルズル引きずられて来たゴーランドを救出中。


「あんたに余計な虫がたからないようにしてくる」って。


私を残してまた出かけて行った、あのバカ猫のせい。







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091115.

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