Novel


□時計塔へと続く道
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Prologue


ある男がぽろっと零した一言がきっかけで、女王がこの城で結婚式を挙げると言い出した。


「残念ですが陛下、彼女に赤は似合いません」


言わずもがな女王のではない。
女王がお気に召された余所者のだ。


「…ふん。試してみんことには分からぬだろうが」


その案は宰相の手により書き留められた。

そして今はこの時間帯内に積み重ねられて完成した決定事項の山、遥か頂上に置かれている。
最優先で進めるものとして。


「だから、試すだけ時間の無駄ですってば。
 僕の大切なアリスの時間をそんなくらだない事に費やさせないでください。いい迷惑です」


この件がうやむやになり、消え去る可能性はまず無いに等しい。

何せ話はあっという間に進みに進み、少し前から女王と宰相が言い争いをしているのはウェディングドレスの"色"について。


「いい加減にせい、ホワイト。アリスを手に入れたのはおまえではない。
 いくらおまえが白いドレスを着たアリスをその瞳で考えようがそんな事は叶わぬ」


早くも女王の瞳はアリスを着せ替え人形に出来ることを想像し、それはもうキラキラと眩く輝いているのだ。


「…いいえ、叶わないのは貴方の方です。
 そもそもあんな地味でしみったれた男の隣で、赤だなんて派手のど真ん中を突いたカラードレスをアリスが着ていられる筈ないんですから」


花嫁、花婿となる肝心の当人達の了承は取っていない。

そんなものを取る必要性がないし、関係さえないからだ。


「知ったことか、そんなこと!わらわは女王、ここはわらわの城。わらわが赤と言ったら赤なのじゃ!」


赤の女王がやる、と言ったら必ずで。
もう決まってしまったことなのだから。


「……はいはい。ですが、今回ばかりはそれじゃ通りません」


こうなってしまっては、いくら当人達が嫌がって、休戦地区である住まいにて引き籠る旦那お得意の戦法で抵抗を試みようが敵いはしない。





――――きっと当人達は、この城発信の噂で自分達の結婚式が開かれることを知ることとなるのだろう。







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091229.

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