Novel
□番外編
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【another】
いつか学校帰りに本屋へ立ち寄った際「親がそんなだから子供も染まる」という見出しの本を見かけたことがある。
親は親、子供は子供、別物よ、と。
私は結論を出していたのだが何とは無しにその本を手にとった。
内容は大人に近付くにつれ子供は親と同じになる、同じくなりたくなければ離れるべきだと。
そうゆう事柄がくどくどと書かれてあった。
正直その時はありきたりな内容だと思った。
だがその本がきっかけとなり、私はこの家を離れることをより強く考え始めた。
母や姉との思い出が残るこの家、この庭から離れることを。
この家を出て行く。
それはこの家に残ったたった3人という家族からまた一人抜けるということ。
別に二度と会えないというわけではないが、それはとても言い難かった。
父親にその話を持ち出すのはこの家のタブー。
だから随分とどう話を持ち出そうかを考える毎日が続いた。
そしてそれだけが、みんなに耽る私を切り離してくれていた。
ところがある食事の席で、父さんは「出ていっても構わない」と。
私の目を見据えてたった一言そう呟いた。
突然だった。
あまりに突然で、確か私は口に運びかけていたフォークを手から落としてしまったと思う。
父さんはその事を話し出せずにいた私の心の的を射たのだ。
イーディスもその言葉を聞いても黙って食事を続けたし。
自分の子供へさえ興味の薄くなった父親と、3人の家族となってからというもの姉の私を避けだしていた妹。
二人ともが私の考えに気付いてそれを許してくれる。
でも私の顔には嬉しさがのぼることはなかった。
とても情けなくて。
普通ありがとう、とまず感謝を伝るところ。
だけど二人は感謝じゃなく私に謝罪の方を求めている気がしたから。
「ごめんなさい」と。
二つのことに謝罪をした。
一つめは残していくわけじゃなくても、私がこの二人から離れていくことに。
二つめは私では埋めれなかったことに。
ロリーナ姉さんの位置はやっぱり姉さんのもの。
それは埋まることのない位置だ。
私にはとても埋められない。
そんなのとっくにわかっていたことだけど…、どうしても姉さんの跡を埋めれない自分が情けなくてしょうがなかった。
住居を変えることになるのでと告げ、迷惑にならないよう次の社員が見つかるまで働いた。
そしてついに先週、新しい社員と代わるように今までお世話になってきた出版社を辞めた。
辞めたのは仕事が合わなくなったからでも嫌がらせを受けてというわけでもない。
やらせてもらった仕事には凄くやり甲斐を感じていたし、良い上司と温かい社員に囲まれるという好環境に私はいた。
それでも辞めたかった理由。
…………それは場所。
同じ町にいては何もカワレナイと思った。
隣町だって構わない。
とにかくこの地区から離れたかった。
私が育ったこの場所とは違う時間が流れていれば、それでいい。
ただそれだけで。
居場所なんて違かろうが、同じだろうが、大して変わらないのかもしれない。
それでも私はきっかけを切望した。
新しい仕事を探すのは後にしようと、まず第一に住む場所を決めることにした。
毎日探し探し学校へと通っていた。
だけど自分でも気付かないうちに私はまたみんなに耽りだしていた。
――――そんなさなかだった、
『だからっ…こないか私のアパートに!!』
夢の中で青白い顔をした夢魔と再会をしたのは。
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(本当に嬉しかったのまた会えて。
貴方の見せてくれる夢は不確かなものだけど、その中には確かなものがあるって知ってるわ)
091129.
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